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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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首ちょんぱにっく4


「フレ−っ、フレーっ、クラガク!」
 チヤリーダーに混じってビビも応援団に加わっていた。しかも、どっから手に入れたのか、ポンポンを両手に持ってフリフリしている。
 応援団に加わっているのはビビだけかと思ったら、ぞくぞくと生徒たちがどこから押し寄せるようにやってきて、大声援を送りはじめたではないか!?
 大波のように声援があたりに木霊する。
「立つんだ、立つんだジョーッ!」
「ジョーじゃないし!」
 ツッコミながらルーファスは目を覚ました。
 バスケ部員に抱えられたまま、あたりを見回すとコワ〜イ顔をしたファウストと眼が合った。
「ルーファウス!」
「(えっ、なんでいきなり僕、怒鳴られてるの?)」
 八つ当たりです。
 依然としてファウストはボールを奪うことができずにいた。
「ええい、こうなれば仕方あるまい!」
 ファウストの身体を包み込むような黒いオーラ。魔力はマナフレアのように。光球として視覚化することもあるが、このようにユラユラと煙立つこともある。
「奪えぬなら燃やし尽くすのみ。シャドウフレ――」
 思いっきり攻撃魔法!
 ――を放つ寸前、廊下の角からカーシャがあらわれた。
 二人の教師の目が合った瞬間、火花がバチバチと飛び散った。
「ん、ファウストではないか? 先に言っておくが、妾のサイフには小銭しか入っていないからな」
「あなたってひとは、そうやっていつまで借金を踏み倒す気なのですか?」
 カーシャはファウストに5000ラウルの借金がある。
 契約書はこれだ!
 ファウストが片手で垂らすように広げた羊皮紙が揺れる。風もないのにバサバサと揺れ、まるで地響きのような唸り声が。どこからともなく聞こえる。
 悪魔の契約書。
 契約書の中から悪魔が呻き声を上げて飛び出してきた。
 悪魔と言ってもその姿は仔悪魔ビビちゃんとは似ても似つかない。フライパンでましたみたいな潰れた醜悪な顔。ちょっと茹ですぎましたみたいな赤黒い肌。二本の角は思わず両手でつかんで、操縦桿ごっこをしたくなる!
 とにかくっ、とってもコワ〜イ悪魔なのだ。
「今日という今日は許しませんよ」
 ファウストはボール奪えないことで、完全にカーシャにも八つ当たり。
 ポイッと生首が捨てられた。
「わああっ先生!」
 叫ぶ生首にカーシャは目をやった。
「ルーファス……か?(ファウストよりあっちのほうが楽しそうなのだが)」
 そんな都合には合わせてくれない。
 悪魔が鋭い爪を振り上げて襲い掛かってきた。
 クラウス魔導学院恒例行事のカーシャとファウストの小競り合い。生徒たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。どうやらドゥラハンの幻術も溶けたようだ。
 で、肝心のドゥラハンの剣と首なし胴体は?
 なんて探してる余裕などルーファスにはなかった。
 放物線はすでに頂点を折り返し、顔面から床に直面しようとしていた。
「助けて!」
 ブフォォォォォォォォツ!
 突如吹き荒れた狂風。暴走教師のどっちかの放った魔法の余波が風を巻き起こし、激突寸前だった生首を吹き飛ばした。
 どうにか床直撃の危機は回避されたが、別の問題が浮き彫りになってきた。
 もうすぐこの場は戦場となるだろう。
 ルーファスは自らの意思で逃げることができない!
 今の突風だってヘタをすればヤバかった。
 自由落下で激突場所に到達しようとしている生首に、さらなる危機が迫っていた。
 大きく的を外したツララがこっちに飛んでくる。
 避けることは不能!
 ルーファスは口いっぱいに空気を吸いこんでほっぺを膨らませた。
「ヨガファイア!」
 ブフォォォッ!
 口から火を吐いた生首。もう曲芸の域に達している。
 ツララの矢は炎によって溶かされたのだが――。
「あちぃっ、ちいっ、ひゃあっ前髪に!」
 引火。
 そして、ドゴッと顔面から床に激突した。
「……………(イタイ、もうヤダ)」
 特有の焦げ臭さが鼻をグギュ〜っとさせた。
「ルーちゃんだいじょぶ!?」
 今までどこかに消えていたビビが駆け寄ってきた。
 生首を拾い上げて顔を自分に向けて、プッとビビは噴き出した。
「(前歯が抜けてる)」
「どうかした?」
「ぷっ……んぷ…な、なんでもないよ」
「そう?」
 不審な目でじとーっと相手を見つめながらも、本人は前歯が逃走したことに気づいていないようだ。
 とりあえずルーファスは別の話を切り出す。
「ところで今までどこに行ってたのさ?(ビビさえいれば床に激突せずに済んだかもしれないのに)」
 そして、歯も抜けずに済んだ。
「それが……みんなで甲子園を目指してたんだけど……ショックなことに野球部員がひとりもいなくって」
 なんの話だよ!
 とりあえずドゥラハンの剣のせいでみんなが混乱していることは間違いない。
 ドカーン!
 ゴゴゴゴゴゴッ!
 近くでなにやら騒音がする。そういえばここは戦場だった。
「とにかくここを離れよう」
 ルーファスが提案するとビビはうなずいた。
「うん」

 放課後の学院には普段から多くの生徒が残っているが、今日はとくに生徒が多い。
 その多くの生徒が体操着姿だった。
 ルーファスとビビはドゥラハンの剣を探して、メインスタジアムまで着ていた。
 多くの在校生および関係者がいるクラウス魔導学院は、それひとつで都市として完結している。グラウンドもスポーツごとに分れていたり、プロスポーツも行われるスタジアムも有している。
 メインスタジアムは通称ビッグエッグ。その名のとおり、エアドーム式全天候型スタジアムであり、つまり屋根付きドームである。
 明日の大運動会のメイン会場でもある。
 秋分の日に合わせて毎年開催されるクラウス魔導学院秋の大運動会。ちなみに学生の公募で決まった今年のスローガンは『』である。
 スタジアムのグラウンドでは競技の準備や予行練習が行われている。
 体操着姿の生徒が多い中、空色ドレスがふあふあと歩いているのが目についた。
「ローゼンクロイツ!」
 ルーファスが声をかけた。
 が、ローゼンクロイツはまったく気づかないようで、ふあふあと歩き続け雲をつかむような動作をしている。
「ローゼンクロイツ!」
 また声をかけたが、やっぱり気づいてもらえない。
「ちょっと近づいてくれる?」
 頼まれたビビはローゼンクロイツに近づきながら口を開けた。
「ローゼン!」
 やっぱり気づかない。続け様に呼びまくる。
「ローゼンクロイツ! ロックン! ロークン!」
「ん?(ふにゃ)」
 やっと振り向いた。
 そして、一瞥してすぐに顔を空に向けた。
「なんだルーファスか(ふあふあ)」
「呼んだのアタシだし!」
 ビビはスルー。抱えているルーファスの生首にも気づいたらしいが、驚かずに素っ気ない態度。
 自分がこんな目に遭っているのに素っ気なくされて、ルーファスちょっぴり寂しげ。
「いやいやいや、僕のこんな姿見て驚かない? ちょっとは驚こうよ」
「驚いたよ(ふあふあ)」
 表情一つ変えずの一言。まったく驚いているように見えない。
 そして、続け様に一言。
「さっきはね(ふにふに)」
 さっきとな?
 首がないので、首を傾げているつもりのルーファス。
「過去形?」