小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

魔導士ルーファス(1)

INDEX|91ページ/110ページ|

次のページ前のページ
 

 まだこの国に来て間もないビビは、かなりこっちの情報にうとい。
 ビビは目を輝かせたままルーファスを見つけた。
「早く行こうよルーちゃん!」
「え?(さっきの勘違いとかはもういいの?)」
「早く早くぅ!」
 ビビはルーファスの腕をつかんで、リファリスを押しのけて玄関を出て行った。

 国内最大級の建国記念祭――の前夜祭。
 前夜祭と言ってもその盛り上がりは異常なほど盛り上がっている。
 この国の人々は年明けの夜もドンチャン騒ぎをするが、それと同じような盛り上がり方をしている。
 まだ少し陽は高いが、出店は賑わって混み合っている。
「次は金魚すくいやろうよ!」
 ルーファスの腕をグイグイ引っ張るビビ。
「生き物とかは飼うのめんどくさいよ」
「だったらカメすくいでいいよぉ」
 ほっぺを膨らませてビビはすねて見せた。
「金魚もカメも生物だよね? 私の言ってたこと聞いてた?」
「べつにアタシが飼うんじゃないしー」
「じゃあ誰が飼うの?」
「そんなのルーちゃんに決まってんじゃん!」
 勝手に決められた。
 リファリスが『フフン』と鼻を鳴らした。
「わっちを差し置いて金魚すくいをやろうなんざ良い度胸だね。金魚すくいゲーム荒しと言われたわっちと勝負するかい?」
 ビビちゃんは『フフン』と鼻を鳴らした。
「その勝負受けるよ、ルーちゃんが!」
「はっ? なんで私なの!?(金魚すくいとか一匹も取れたことなんだけど)」
 勝負をルーファスに託したと言うことは、きっとビビも金魚すくいが苦手なのだろう。
 ヤル気まんまんのビビとリファリス――の犠牲者になって引きずられていくルーファス。
 が、ここでビビがある物を発見!
「リンゴ飴だ!」
 さらにリファリスもある物を発見!
「おっ、ビールと肉が売ってるじゃないか」
 二人とも金魚のことなど忘れて店に向かって走り出す。
 ビビに腕をつかまれてたルーファスが引きずられる。今日はなんだか振り回されっぱなしだ。あ、いつもか。
 リンゴ飴をおっちゃんから受け取ったビビはルーファスの顔を見て、
「ルーちゃんお金」
「はいはい(月末は苦しいのになぁ)」
 しぶしぶ財布からお金を出すルーファス。
 家出少女のビビは、あまりお金を持っていないので、いつも周りの支援者に助けられて生活をしています。
 お返しはとびっきりの笑顔。
「ルーちゃんありがとー♪」
 八重歯がとってもチャーミングだ。
 リンゴ飴を買ってもらったビビはスキップをして歩き出したのだが――ドン!
 人とぶつかってリンゴ飴を落としてしまった。
「アタシのリンゴ飴ーっ!」
 ビビちゃんショック!
 ぶつかった人物はフードを目深に被って顔を隠していた。それに腹を立てるビビ。
「ちょっと顔見せてよ!(その顔絶対忘れないんだから)」
 食べ物のうらみは怖い。
 フードの男は首を横に振った。
「ごめん、あまり人の多いところでは顔を出したくないんだ」
「何様のつもりー!!」
「本当にごめんよビビちゃん。ちゃんと弁償するから許しておくれ」
「……え?(なんでアタシの名前知ってるの???)」
 男は少しだけフードを上げて見せた。そこにあったのはクラスメートで、しかもこの国のいっちばんエライ人の顔。
 思わずビビは叫ぶ。
「あっ、クラウス!」
 名を呼ばれたクラウスは唇の前で人差し指を立てた。
「しーっ、いちようお忍びなんだ」
 そう言ってクラウスは新しいリンゴ飴を買って、それをビビに手渡した。そして、この場から逃げるように、ルーファスたちと歩き出した。
 出店を楽しそうに見つめながらクラウスは話しはじめた。
「まだ零時まで時間があるだろう。ヒマで仕方なくてね、コッソリ抜け出して来ちゃったよ」
 それを聞いてルーファスは心配そうな顔をした。
「コッソリはマズイんじゃなの?」
「城の者は大騒ぎだろうね(特にエルザは怒り心頭かな)。でも零時まで軟禁状態で、すぐ目と鼻の先でお祭りの音や匂いを嗅がなきゃいけない僕の身にもなっておくれよ」
 この祭りの風習を知っている者なら引っかからない言葉だが、当然ビビは気になった。
「零時までって?」
 クラウスはニッコリ笑った。
「そうかビビちゃんは知らないんだね。明日が建国記念日なのは知ってるかな?」
「うん、今日よりすっごいお祭りやるんでしょ?(わくわくするー)」
「その建国記念祭のはじまりを合図を国王である僕がやらなくてはいけなくて、少しでも合図が遅れては行けないと言って、あそこに見える塔に僕を軟禁するんだよ役人たちがね」
 前夜祭のメイン会場は聖リューイ大聖堂が見下ろすアンダル広場。その聖リューイ大聖堂には、今は使われていない鐘楼があり、そこから国王が零時ちょうどに合図をすることになっている。
 ビビは大きく何度かうなずいた。
「ふ〜ん、それで合図ってどうやるの?」
「角笛を吹くんだ。これは建国時から伝わる王家の家宝で、その音色は遠くグラーシュ山脈の山頂まで届く。と言っても実際に音が届くのせいぜい塔の下くらいまでで、山頂まで届くのは魔力の波長なのだけれどね。それによってヴァッファートが街の上空までやって来て、建国記念祭がはじまるんだよ」
「ヴァッファート?」
「この国の守護神である白いドラゴンだよ」
「へぇ〜っ(そう言えば、この国の国旗ってドラゴンだったような気がする、ような気がする)」
 アステア王国の国旗は白銀の霊竜ヴァッファートである。
 いつの間にか3人は聖リューイ大聖堂に近くまで来ていた。
 ここでクラウスは別れを告げる。
「僕はそろそろ戻るよ。あまり留守にしていると、騒ぎを多くなってしまうからね。では、またね」
 立ち去ろうとするクラウスの腕をビビがつかんだ。
「ちょっと待って!」
「ん?」
「角笛見せて! だってすっごいお宝なんでしょ、興味あるもん」
「う〜ん(どうせヒマだしな)。可愛いビビちゃんの頼みなら仕方がないね」
 ここでルーファスがボソッと。
「クラウスはいつも女の子に甘いなぁ」
 そして、ルーファスがいつも女性軍に振り回される。
 こんなわけで、ルーファスとビビは角笛を見せてもらえることになった。
 一方、別の場所でリファリスはというと、もちろん酒を浴びるように飲んで暴れ回っていた。