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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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角笛を吹き鳴らせ1


「ただいまー」
 自宅に帰ってきたルーファスは、久しぶりに『ただいま』のセリフを言った。
 リビングに向かうと、ソファに立て膝をついて座って、陽が落ちる前から飲んだくれている誰かさんがいた。
「おかえりルーファス」
 ビール片手にあいさつをしたリファリスだった。
 下着姿同然で目のやり場に困る。
「リファリス姉さん、服着てよ」
「ん? 着てるつもりだけど?」
「そうじゃなくて、もっと厚着してよ」
「いいじゃん別に家の中なんだし」
「だからさ……(これ以上言ってもムダかも)」
 ルーファスは溜息を吐いて口を結んだ。
 久しぶりに故郷へ帰ってきたリファリスは、昨日からルーファスの借家に同居中。はじめはルーファスも反対したが、母と姉は修道院暮らし、父親のいる本宅なんかには行きたくない、かと言って宿屋に泊まるのもお金がもったいない。そんなこんなで、強引に押しかけられてしまった。
 飲んだくれているリファリスの周りには空き瓶が転がっている。かなりの散らかりようだが、はじめから部屋が汚かったので、あまり目立っていない。ルーファスと同じでリファリスも片付けなどが苦手らしい。
 リファリスのせいで腐海の侵蝕が2倍のスピードだ!
 だが、ルーファスは空き瓶を片付けはじめた。
「ゴミくらいちゃんと片付けてよ」
 人が散らかすのは気になるらしい。
「そんなこと言うなら、ちょっとは部屋片付けろよ」
「うっ(痛いとこ突くなぁ)」
 たしかの片付けられない人間が、片付けられない人間に説教しても説得力がない。
 ルーファス敗北!
 まあ、ルーファスがどんなに正しくたって、リファリスは力押しで勝つだろうが。
 玄関のドアが開く音がした。
「ルーちゃん元気!」
 今日も元気なビビだった。てゆか、ルーファスとさっき別れたばかりだ。
 勝手に家に上がり込んでリビングまで来たビビが凍り付く。
 ソファで飲んでくれている謎のお色気美女。
「……ルーちゃんのえっち!」
 ビビのパンチが炸裂!
「ふぼッ!」
 無実の罪でぶっ飛ぶルーファス。
 ビビは鼻血ブーしているルーファスに詰め寄った。
「ルーちゃんだれあの人! お酒飲まして泥水したところを襲おうなんて変態のすることだよ!」
「ちょちょちょ、ちょっと!」
「ルーちゃんがそんな人だとは思わなかった。もう幻滅だよ」
「誤解だってば!」
「あれのどこが誤解なの!」
 ビビはビシッとバシッとリファリスを指差した。
 のんきにリファリスはあくびなんかしちゃってる。それを見たビビはさらなる妄想。
「もしかして一夜過ごしちゃったの! 昨日の夜は朝まで寝かせないよっとか言って、この人今起きたんでしょ!」
「だーかーら!」
 ルーファスはリファリスの横に立って顔と顔を寄せた。そっくり度を示すつもりだったが、完全に裏目。だって似てないもん。
「女に近付いちゃって、もう親密な仲ってことなの!(そんなのアタシにわざわざ見せつけるなんてホントサイテーだよ)」
「違うって、僕ら姉弟なんだよ!」
「ウソばっかり、ぜんぜん似てないじゃん!」
「似てるよ! 僕とリファリス姉さんは父さんになんだよ!」
 このルーファスの一言がさらなる戦いの火ぶたを切ってしまった。
 リーファリスがルーファスの胸ぐらをつかんだ。
「誰と誰が似てるって? もう一度はっきりと言ってごらん?」
 目が座っている。
 急接近したルーファスとリファリスの顔を見たビビが目を丸くした。
「キスするつもりなの!!(しかも女からなんて積極的!!)」
 ビビの勘違いは止まらなかった。
 リファリスはルーファスの胸ぐらを押し飛ばし、ズカズカとビビの目の前に立った。
「あんたもギャーギャーうるさいねぇ」
 そして、事件は起きた!
 ブチュー!
 リファリスがビビの唇を奪ったのだ!!
 凍り付くビビ。
 唇を離して舌なめずりをしたリファリス。
「キスしてやったんだから黙ってな」
 だれもキスしてくれだなんて言ってないのですが?
 ここでルーファスがボソッと。
「ごめん、言い忘れたけど、リファリス姉さんは男でも女でもイケる人だから」
 両刀遣い!
 ビビちゃんショーック!!
「……アタシ……今……女の人にキス……されたよね?」
 魂離脱寸前、放心状態。
 理解不能な衝撃的なことが起きたとき、冷静になろうと人はとにかく理由付けをする。
「(きっと今のキスはカモフラージュなんだ)ルーちゃんと付き合ってることを隠すためにアタシとキスしたんだー!」
 パニック状態の時の理由付けは、だいたいツッコミどころがあるものだ。
 ルーファス&リファリス。
「「は?」」
 きょとんとされてしまった。
 それでもビビはとまらないのだ。
「絶対にアタシは騙されないからー!」
 なにを?
 とツッコミたいところだが、ビビの中では成立している。
 突っ走るビビについていけないリファリスは溜息を吐いた。
「はいはい、わっちはそろそろ出掛けるから、あとは二人で解決しろよー、ルーファス?」
「僕が!?」
 二人っきりにされたら、ルーファスが押されて話がこじれそうだ。三人でも十分こじれるが。
 そこら辺に脱ぎ捨ててあった服に着替え、玄関に向かおうとリファリスが歩き出した。
 だが、両手を広げて立ちふさがったビビ!
「逃げるなんてズルイ!(とことん追求してやるんだから!)」
「わっちは今から大好きな酒を飲みに行くんだ。止まるんだったら承知しないよ」
 リファリスは牝豹の表情でビビを舐めるように見た。
 再び凍り付くビビ。
「うっ……(またキスされる)」
 ササッとビビは身を引いた。そして、ルーファスの後ろに隠れ、
「出掛けるんだったら、ルーちゃんとアタシも手を繋いでついて行くから!」
「は?」
 っと言ったのはルーファスだった。
「私とビビがどうして手を繋がなきゃいけないの?」
「もしも本当に付き合ってるんだったら、ほかの女と手を繋いでるの見せつけられたらイヤでしょ? ルーちゃんと手を繋がせてくれたら二人が間違いを起こしてないって信じてあげるよ!」
 って言われても。
 うんざり状態のリファリス。
「手を繋ぐだけなんてぬるいね。ヤルとこまでヤッちまえばいいだろルーファスと」
 この過激な発言にルーファス放心
「…………」
 ビビは顔を真っ赤にした。
「ヤルって、そんな……ヤルだなんて不潔な言い方しないで!(結婚する人としかそういうことしちゃいけないんだよ!)」
 いちよう皇女様なので、そういうところは固い。
 爆弾発言だけ残してリファリスはさっさと立ち去ろうとしていた。
「んじゃ、わっちは祭りで思う存分酒を浴びてくるから」
 祭り?
 それを聞いたビビが気持ちを一変させた。
「お祭りってどこどこぉ?」
 なんかもうさっきのことなんか、なかったことにされてるくらいの食い付きだった。
 目を輝かせるビビに見つめられたリファリスは、ニヤリとして答える。
「祭り好きなんてわっちと気が合いそうだねぇ。どうやら知らないみたいだから教えてやるけど、この国最大の祭りが建国記念日の明日やるんだよ。今日はその前夜祭ってわけさ」
「そうなの!?(だから明日学校休みだったんだ)」