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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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アイツの姉貴はセクシー美女1


 魔導産業によって栄えたアステア王国。
 小国でありながら、その経済力は世界トップ水準であり、王都とならばその発展はめまぐるしい。
 今まで発展の乏しかった大運河を挟んだ東側にも、発展の波が押し寄せ建設ラッシュが進んでいる。
 魔導産業で栄えたこともあり、王都には魔導に関するショップが数多く点在している。
 クラウス魔導学院の近くにもいくつか魔導ショップがあって、ルーファス御用達のお店といえば、マジックポーションショップ鴉帽子!
 三角帽子を被ったカラスがマスコットのこのお店は、クスリの調合に関してはエキスパート。しかも金さえ払えばどんなクスリでもつくっちゃいます。もちろん裏ルートからの仕入れも豊富だったりする。
 お店のドアを開けると、
「いらっしゃいませ〜♪」
 三角帽子を被った童顔の女主人マリアが出迎えてくれる。自称23歳とのことだが、実年齢に関しては諸説ある。ちなみに童顔のクセにカーシャに勝るとも劣らないスイカップだったりする。
「マリアさんこんにちは」
 ペコリとルーファスはカウンターのマリアに向かって頭を下げた。
 店内は薄暗く、パッと見渡せるくらいの大きさしかない。壁一面の棚には薬が並び、店の奥からは謎の臭いが漂ってくる。
 そして、どこからか聞こえてくる悲鳴。
 ルーファスは怯えた表情で店の奥に首を伸ばす。
「あのぉ、また悲鳴が聞こえるんですけど?(怖いなぁ、地獄の釜で人が茹でられてるみたいな悲鳴だよねぇ)」
「ごめんなさぁい、すきま風がひどいんですぅ〜(ったく、ガタガタうるさいのよね、いつも)」
 ぶりっこ口調と裏腹の心の声。この魔性の女に痛い目を見た魔導学院の男子生徒は数知れず。
 もちろんこの店のルーファスが被害に遭っていないはずがない。
 マリアは注文を聞く前にカウンターの上に薬のビンを置いた。
「ルーたんのために今日も特別な胃薬と下痢止めを調合しておいたから、今度は効いてくれるとうれしいなぁ」
「いつもいつもありがとうございます」
「いいえ、こちらこそごひいきにしてもらってうれしいですぅ(今回のクスリはどんな効果が出るか楽しみ楽しみ♪)」
 見事なまでに実験台!
 しかも、どうやらそれに気づいていないルーファス。
「前回のクスリは体に合わなかったみたいで、日焼け後にみたいに全身の皮がむけちゃって大変でした。すぐ治りましたけど(せっかく僕専用に調合してもらってるのに、ぜんぜん胃が良くならなくて悪いことしちゃってるなぁ)」
 実験台にされていることに気づいていないだけではなく、自分を責めるというおバカっぷり。
 本当に良いカモだ。
 魔性の女マリアは瞳をキラキラ輝かせて、ルーファスの手をギュッと両手で握り締めた。
「ごめんなちゃ〜い、今度こそは大丈夫だからわたしを信じてっ!」
 女の子の手の柔らかさと、その心地良い温もり。さらに輝く瞳で見つめられたら、ルーファスなんてすぐに顔が真っ赤になってしまう。
 そして、大きくうなずいてしまうのだ。
「あ、はい、信じます!」
 ルーファスKO!
 見事なダメっぷりを今日も見せつけてくれる。さすがへっぽこ魔導士ルーファスだ。
 落ちた人間を操るのは容易い。
「そうだルーたん!(そうだ、アレ頼んじゃお)」
「なんですか?」
「ちょっとホワイトドラゴンまでおクスリを運んでもらいたいんだけどぉ」
「あ、ホワイトドラゴンって港にある酒場ですよね?(なんだか怖そうだなぁ)」
「ねぇ、お願い♪」
 マリアの瞳からキラキラビーム発射!
 直撃を受けたルーファスは首をカクンとうなずいた。
「あ、はい!」
「ありがとぉルーたん(ほんとルーファスってばかなんだから)」
 それがルーファスクオリティですから。

 産業が盛んなアステアは貿易も盛んであり、王都の横を流れるシーマス運河は今日も多くの貨物船が行き交っている。
 内陸にある王都アステアの港は運河にある。
 港近くには男たちをねぎらう酒場がいつくもある。その中でもっとも賑わっている酒場と言えば、アステアの強さの代名詞になぞられた『ホワイトドラゴン』だ。
 店内に入る前から酒の臭いが漂ってくる。酒に弱いものなら、その臭いで酔ってしまいそうだ。
 小包を抱えたルーファスはすでに吐きそうだった。
 アステア王国では15歳から飲酒が認められており、16歳のルーファスはその年齢に達しているのだが、彼は一滴も酒を飲むことができない。
 ホワイトドラゴンは船乗りだけでなく、船に乗ってきた渡航者の客も多く、魔導衣もちらほらといるにはいるが、やっぱりルーファスはなんだか浮く。
 ルーファスはヨロヨロとしながら、カウンターに向かって歩き出した。
 テーブル席になにやら人だかりができていて、男たちの歓声があがっているが、ルーファスは無視無視。自分が場違いなことくらい、ルーファスにだってわかっている。なるべーく、人とも目を合わせないようにさっさと移動する。
 カウンター先に付いたルーファスは身を乗り出して、マスターに声をかけた。
「鴉帽子からのお届け物を預かってきました(うっぷ、吐きそう)」
 すると、ガタイの良いスキンヘッドのオッサンがルーファスの前に現れた。
「おう、ご苦労さん。ありがとよ」
 オッサンが小包を受け取るため手を伸ばす。その腕にはドラゴンの刺青が彫ってあり、ルーファスはちょっぴりドッキリする。
 この店にいる人たちは、ルーファスの人生ではあまり関わらない人たちだ。もう心臓バクバクである。
「あ、えっと、お荷物ちゃんと渡しましたから。じゃあさよなら!」
 急いで立ち去ろうとするとオッサンに呼び止められてしまった。
「兄ちゃん、せっかく来たんだから飲んでけよ」
「いえ、私は……まだ用事があるのでまた今度(またとか絶対ないけど)」
 そこは社交辞令である。
 今度こそルーファスはこの場を逃げ出そうと出口向かって歩き出した。
 そのときだった!
 眼を剥くルーファス。
 ドスン!
 目の前に人が降ってきた。
 嫌な予感がする。という、人が降ってきた時点で嫌なことが起きているハズだ。
 ルーファスは人が飛んできた方向を急いで振り向いた。
 すると、人だかりの中から次々と人がぶっ飛んでくる。まるで噴火だ。
 しかも運が悪いことに、全部ルーファスのほうに落ちてくる。
「ちょっと、えっ、なに!?」
 ビックリしながらルーファスは必死で避ける避ける。案外ルーファスは避けるが得意だったする。
 落ちてきた男たちの顔をよく見ると、殴られた青あざある。
 状況的に考えて、乱闘がはじまってしまったらしい。
 飲み屋の乱闘なんてタチが悪すぎる。
 巻き込まれる前にルーファスは立ち去ろうとしたのだが、騒ぎの中心から聞こえる声で足を止めてしまった。
「オラオラ! もうおしまいかい、男のクセに度胸のない奴らだねぇッ!」
 女の声だ。
 足を止めていたルーファスの不意を突いて男が飛んできた。
 ゲフッ!
 落下の直撃を受けたルーファスが押しつぶされて床にへばった。
 カエルのようにつぶされているルーファスの顔の横で、座って飲んでいるガタイの良い老人が、被害に遭ったルーファスをチラリと見て騒ぎの中心に目を戻して口を開く。