魔導士ルーファス(1)
これまでにないほどの鼻血がルーファスの鼻から放たれた。それは止まることなく噴き続け、エロダコをペンキで塗りたくったように真っ赤に染めた。
鼻血ブッハー!
鼻血ブッハー!!
鼻血がブッハーっ!!
体内の血液を全部出す勢いでルーファスは鼻血を噴き続けた。
そして、驚くべきことに、鼻血を浴びたエロダコが見る見るうちに縮んでいくではないか!
エロダコは子供ほどの大きさまで縮んでしまった。今がチャンスだ!
エルザの手から光の鎖が飛ぶ。
「エナジーチェーン!」
鎖でグルグル巻きにされたエロダコは身動き一つできない。
やった、ついにエロダコを封じることに成功した!
鼻血を浴びたのはエロダコだけではなかった。
ビビは真っ赤になった身体から蒸気を昇らせていた。そして、渾身の力を込めて拳を握った。
「ルーちゃんのばかーっ!!」
グーパンチはルーファスの顔面ど真ん中にヒットして、力なくルーファスがぶっ飛んだ。しかし、鼻を殴られたというのに、もう一滴も血は流れなかった。
突然、空が眩い光で包まれた。
何事かと空を見上げたカーシャがいち早く発見した。
「UFOか?(そんなまさか……)」
円盤型の空飛ぶ物体が上空から地上近くまで下りてくる。まさしくこれは未確認飛行物体、略してUFOだ。
UFOは目が眩むほどの閃光を放った。
この場にいた全員が強く目を瞑った。これってまさかキャトル・ミューティレーションの前フリなのか?
キャトル・ミューティレーションとは、強い光もしくはUFOを見た直後に気を失い、目が覚めたら身体のどこかに金属片を埋められているっていうアレだ。
だが、そんなことにはならなかった。
閃光が治まって、視界が元通りに戻ると……。
「エロダコがいない!」
ビビが叫んだ。
みんなで辺りを探し回ったが、やっぱりエロダコの姿はなかった。
あのUFOがエロダコを連れ去ったに違いなかった。
この事件は今夜のニュース番組でさっそく特集が組まれることになり、クラウス王国のみならず、近隣の国でも高視聴率を記録した。
――そして、鼻血ブーで入院を余儀なくされたルーファスの元に、ローゼンクロイツがお土産を持って遊びに来た。
「鼻血で入院なんて聞いたことがないよ(ふあふあ)」
「悪かったね(出したくて出してるわけじゃないんだ)」
「体調のほうはどうだい?(ふにふに)」
「まだちょっと頭がボーっとしてるかな……」
ルーファスの鼻の穴から赤い液体がツーッと流れた。また鼻血だ。
ザ・おっぱい!
ルーファスの脳裏にアノおっぱいが焼きついてしまっていた。思い出すたびに鼻血が出てしまう。やっぱり免疫なさすぎである。
ローゼンクロイツは思い出したように、ハンドバッグからお弁当箱を取り出した。
「お土産を持って来たよ(ふあふあ)」
「なにこれ?(お弁当箱って……なんか嫌な予感)」
お弁当箱を受け取ってフタを開けてみると、中に入っていたのはタコヤキだった。
「食えるかっ!」
あんな事件があったあとで、タコヤキを食べれるほどルーファスの神経は図太くない。
「美味しいから食べてみてよ、ほら、あ〜ん(ふあふあ)」
ローゼンクロイツは爪楊枝でタコヤキを差して、それをルーファスの口に近づけた。
ここまでされたら食べるしかない。しぶしぶルーファスはタコヤキを一気に口の中に入れた。
もぐ……っ!?
「うぇっ!」
顔を真っ青にしてルーファスは気絶した。
それを見てローゼンクロイツは首をかしげた。
「おかしいなぁ、美味しいのに(ふにふに)」
ローゼンクロイツはタコヤキを口の中に放り込んだ。
実はこのタコヤキの原料は?アノ触手?だった。しかも、生地はホットケーキミックス、マヨネーズとソーズの代わりに、カスタードクリームとチョコのトッピング。
隠し味は……七味唐辛子だった。
「美味しいのになぁ(ふにふに)」
いつまでもその呟きが病室に木霊したのだった。
第6話_未知との遭遇 おしまい
作品名:魔導士ルーファス(1) 作家名:秋月あきら(秋月瑛)