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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

INDEX|67ページ/110ページ|

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 ビビもカーシャを追って走り出していた。少し遅れてルーファスも後を追った。

 ついにエロダコは運河まで来てしまった。
 物資を運ぶ作業がストップして、港は一時閉鎖に陥った。
 魔導騎兵を引き連れてエルザが再びエロダコの前に立ちはだかった。
「全ての責任は私が取る、生け捕りは中止だ。総攻撃の体制を整えろ!」
 魔力を増幅させる剣を魔導騎士たちが構えた。
 各々の魔力が共鳴して、辺りにマナフレアが浮かびはじめた。大量のマナがこの場に集まってきている。
 そして、魔導騎士の集めたマナが天に翳されたエルザの大剣に集められた。
「ギガサンダーソード!」
 レイラが唱えられた瞬間、エルザの持つ剣が閃光を放ち、自分の身体の4、5倍はある雷光の剣に変化した。
 歯を食いしばりながらエルザは、天を突くほどの雷光剣を振り下ろした。
 稲妻が轟き閃光がエロダコを焼き斬った。
 ギョギャァァァァッ!!
 ヒトとも獣とも付かない断末魔が木霊して、真っ二つにされたエロダコが燃え上がった。
 辺りにタコを焼いたような匂いが立ち込める。お醤油が欲しくなる香りだ。
 その匂いもすぐに焦げ臭い悪臭に変わって、エロダコは完全に灰となってしまった。
 エルザは剣を鞘に閉まって前髪をかき上げた。その額には汗が滲んでいる。
 魔導騎士が集めたマナを一点に集中して解き放つ。攻撃力は絶大だが、全てのマナを引き受けたときの負荷は想像を超える。心身ともにハイクラスの魔導騎士であるエルザだからこそできる技なのだ。
 やっとこれで王都アステアにも平和が戻る……と思ったのも束の間、エルザは言い知れない殺気を感じた。
 灰になったハズのエロダコが再生をはじめている。なんてこったい!
 アンビリバボーなタフさで、エロダコが元の姿――いや、それ以上の姿になろうとしていた。
 触手の長さは数十メートルに及び、体長は15メートル以上の大きさ、頭はまるでアフロヘアーのようにパンパンだ。
 エルザが叫ぶ。
「一時退避だ!」
 触手が縦横無尽に暴れ周り、魔導騎士たちは散り散りに逃げ出した。
 エルザが倉庫の物陰に身を潜めると、そこには先客がいた――ディーだ。
「厄介なことになったなエルザ大佐?」
「こんなところに隠れていないでさっさと退避しろ」
「隠れていたのではないよ、日陰で休憩していただけだ」
 やっぱりディーは陽光の下が苦手らしい。
 2人が隠れる倉庫の陰に、触手が獲物を探して現れた。
 エルザの聖剣が触手を一刀両断した。
 斬られた触手は緑色の液体をばら撒きながら逃げて行った。すぐにエルザは追おうとしたが、その腕をディーが掴んだ。
「待て」
「なにをする放せ!」
 エルザは腕を振り払おうとしたが、それを許さないディー。
「灰から蘇る敵とどう戦うというのだね?」
「構うかそんなこと、全力を尽くすのみだ!」
「そんな猪突猛進な性格では、これ以上の出世は望めんな。さらに出世の道を歩みたいなら、頭を使いたまえ」
「……くっ(たしかに今の私にはあれを倒す術はない)」
 生半可な攻撃では傷一つ負わせることはできず、傷を負わせてもすぐに再生する。そんな敵をどうやって倒すのか?
 ディーはこう助言をする。
「どんな生物にも弱点はある、それを探すことだな」
「そんな弱点いったい……?」
「私が研究中の細菌兵器があるのだが、使ってみるかね?」
「バカなことを言うな、水源の近くでそんな恐ろしい細菌をバラまけるか!」
「……残念だ(良い披見体が見つかったと思ったのだが)」
 細菌兵器が万が一、近くの川に流れてしまったら、ここから下流はそりゃー大変なことになってしまう。
 どこからか叫び声が聴こえた。女の子の叫び声だ。
 エルザはすぐさま倉庫の影から飛び出した。
 触手が蠢く中にビビの姿があった。どうやらまた懲りずに捕まったらしい。
 ビビを助けようとルーファスが必死になって魔導を繰り出す。
「ウィンドカッター!」
 風の刃が触手を切り刻む。だが、いくら切っても切がない。
 エルザは聖剣に稲妻を宿して助太刀に入った。
「ルーファス大丈夫か!」
「ダメ余裕ない!」
 ものすごく正直だった。
 触手に捕まったビビはまたくすぐり地獄を味わされていた。
「きゃははは……ちぬぅ〜……」
 全身をくすぐられて身悶えるビビの姿を真下から見て、ルーファスは顔を一気に沸騰した。
 鼻血ブー!
 真っ赤な鮮血が触手にぶっ掛かった。すると、やっぱり触手はヒドク暴れてビビを解放した。
 それを見ていたディーは呟く。
「もしかしたら、この生物にとってヒトの血は毒なのかもしれん(ヒトの血ほど甘美なものはないというのに)」
 これまでの経由を見ても、エロダコが血を恐れていることは明らかだ。ただ単にルーファスの鼻血がばっちぃと思ってるだけかもしれないが。
 しかし、これに賭けてみる価値はあるかもしれない。
 エルザは即座に判断を下した。
「ディー、病院に連絡して至急輸血用の血液を持ってこさせろ!」
「断る」
 ザ・断言!!
 思わぬ答えにエルザは苛立った。
「どうしてだ、事は一刻を争うんだぞ!」
「輸血用の血液は常に不足している。そんな大事な血液を下賤な生物を殺すために使えるか」
「ここでこの怪物を殺さなくては、怪我人が出るかもしれないんだぞ!」
「なら、これを代わりに使え」
 ディーはある物をエルザに投げた。それを受け取ったエルザは呆気に取られた。
 トマトジュースだった。
「バカかっ、こんな物が代用品になるか、この藪医者めっ!(非常事態にこんなギャグをかますなんて、いったいどういう神経をしているのだ)」
 そんなミニコントをしている間にも、エロダコは暴れ周りながら港の物資を破壊していく。
 触手に破壊されそうな積荷を見てビビが叫ぶ。
「ラアマレ・ア・カピス!!」
 ビビの大好きな果物の積荷が木っ端微塵に破壊され、ピンク色の果汁がそこら中に散らばった。
 食べ物の恨みは怖い。
 大鎌を構えたビビがエロダコの本体に立ち向かう。そして、捕まる。懲りないリピートだ。
「きゃーっ! ルーちゃん助けて!」
 ルーファスに助けを呼ぶビビ。しかし、ビビを救ったのは別の人物だった。
 切れ味鋭い鉄扇で触手を切り刻み、ビビの身体を抱きかかえてカーシャが地面に下りた。
 あの利己主義で有名なカーシャが人助けをするなんて、明日は絶対にハリケーンと大雪と雷雨と地震がまとめてくる。
 抱きかかえられながらビビはカーシャを見つめた。
「カーシャありがとぉ(まさかカーシャに助けられるなんて)」
「これは貸しだからな、絶対に返すのだぞ、ふふっ」
 邪悪な笑みを浮かべるカーシャ。やっぱりこの人に慈善活動って言葉はない。
 ビビを無事に救ったカーシャだったが、2人のすぐ背後にはエロダコの本体が!
 『ハリセンボンのーます♪』くらいの勢いで触手が2人に襲い掛かる。
 誰よりも早くルーファスが動いていた。だが、間に合いそうもない。
 ビビとカーシャが眼の前で襲われる寸前、ルーファスの目に飛び込んできたモノは!
 なんと、カーシャがビビの上着を全て剥ぎ取ったぁぁぁっ!!
 おっぱいポロリン♪
「キャーッ!」
 鼻血ブッハーッ!!