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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

INDEX|62ページ/110ページ|

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 地上では治安部隊がイカタッコン星人をなだめようと、あれやこれやとテンテコ舞のようだ。
 治安部隊がさっさと攻撃に出れないのは理由がある。それはイカタッコン星人にある一定の知性が見受けられたからだ。つまり、安易にイカタッコン星人に攻撃を加えてしまうと、文化圏を越えた国際問題に発展する場合があるのだ。
 カーシャがホウキを地上に向けて運転しはじめた。
「よしルーファス、捕獲するぞ!」
「はぁ!?」
「うまく事が運べば賞金がもらえるかもしれん(そろそろ新しい魔導レンジに買い換えようと思っていたところだ)」
 急降下するホウキに触手が襲い掛かってきた。
 見事な運転でカーシャは触手の間を抜けた――が、ルーファスが振り落とされた。
「ぎゃ〜っ!」
 地面に向かって死のダイブ!
 黒衣の影が地面を駆けルーファスの落下地点に立った。
 謎の男が見事にルーファスをキャッチ!
「無事かねルーファス君?」
 ルーファスをキャッチしたのはリューク国立病院の副院長――黒衣の魔導医ディーだった。今日はサングラスをかけている。
「どうしてディーがここに?(僕のこと抱きかかえながら、何気にお尻さわってくるし)」
「陽の下は苦手なのだが、負傷者が多数出たと聞いては来ないわけにはいかぬだろう」
 ディーは触手の攻撃を軽やかにかわしながら、治安部隊が防御網を張る内側まで逃げ込んだ。
 安全圏まで入ったというのに、ディーはルーファスを下ろそうとしなかった。
「あのさディー、下ろしてくれない?」
「駄目だ」
「なんで?」
「あんな高いところから落ちたのだ。軽い脳震盪を起こしているかも知れぬ、今すぐ病院で精密検査をしてもらうよ」
「やだ」
 ルーファスは逃げるようにディーの身体から無理やり下りた。
 なにかと理由をつけて入院させようとするのはいつものことだ。しかもルーファスに色目まで使ってくる変態だ!
 ディーと距離を置くルーファスの背後から、カーシャがヌッと顔を出した。
「なぜディーがここにいるのだ?」
「うわっ!(カーシャ!)」
 驚いたルーファスが叫びながら飛び退いた。
 嫌な顔もせずディーはまた同じことを答える。
「陽の下は苦手なのだが、負傷者が多数出たと聞いては来ないわけにはいかぬだろう」
 と、言ってる間も、触手に引っぱたかれて男が空を飛んでいた。
 イカタッコン星人はまるでハエ叩きのように触手を動かして、次々と治安部隊を空に飛ばしていく。
 もう誰もイカタッコン星人を止めることはできないのか!
 長い触手が逃げ遅れた近所の若妻に襲い掛かる!
 男たちは散々ぶっ飛ばしたというのに、若妻はなぜか触手を巻かれて上空に釣り上げられた。
 ヌメヌメでグチョングチョンの触手が若妻の太腿を這う。
 カーシャがその光景を見てひと言。
「エロダコめ」
 この瞬間、イカタッコン星人改めエロダコになった。
 カーシャがルーファスに命令を下す。
「あの女を助けて恩を売って来い」
「助けるなんて無理だよ」
 ここにディーが割って入った。
「そうだ、ルーファス君を戦いに赴かせるなど私が許さんよ(だが、怪我をさせて病院に連れて行くのもいいな)」
 妄想をするディーの唇がいやらしく微笑んだ。エロイ人だ!
 そんな話をしているうちにも、若妻は触手の魔の手にあ〜んなことやこ〜んなことをされ、助けようとする治安部隊がハエのように叩かれていく。
 やはりここはルーファスが行くしかないのか?
 しかし、へっぽこ魔導士ルーファスになにができるのだろうか?
 だがカーシャにとって、なにができるできないは関係ない。とにかくルーファスに行けと、ただそれだけだった。
 カーシャがルーファスの身体を持ち上げ、人間ミサイル発射ッ!!
「ぎゃ〜っ!」
 投げられたルーファスがエロダコに一直線。その軌道に迷いはないが、ルーファスの心には迷いだらけ。なんの作戦もなしに敵に突っ込むなんて無謀すぎる。
「助けて!」
 それがルーファスの最期の叫びだった。
 触手が見事ルーファスを打ち返した、ホームラン!
 キラーン☆彡
 ルーファスはお星様になった。
 と、思いきや地上に落下。
 すぐにカーシャが駆け寄った。
「大丈夫かルーファス? まだいけるな?」
 返事はなかったが、カーシャは再びルーファスを持ち上げ、人間ミサイル発射!
 気絶したままのルーファスは声も上げずに再びエロダコの元へ。
 ルーファスは空中で目を覚ました。
 目をパチパチさせながら、ルーファスは状況を把握しようとした。
 眼の前まで迫る牛のような爆乳。成す術もなくルーファスは人妻に抱きつき、顔を爆乳に埋めていた。
 次の瞬間、ルーファスの鼻から赤い噴水が放出された。
「ぐわーっ!」
 鼻血ブー!
 生温い鼻血をぶっ掛けられた触手が、人妻を解放して逃げていく。
 またしてもルーファスの鼻血が触手を追い返したのだ。
 人妻を偶然にも救出したルーファス。だが、触手から解放された人妻が地面に落下したとき、ルーファスはその下敷きになってしまっていた。しかも、ルーファスは気絶していた。
 やっぱりルーファスはイケてない。

 ルーファスが目を覚ますと、緊急用の医療道具で輸血されていた。
 しかも、頭が乗せられているのはディーの膝の上だった。
 思わずルーファスは飛び起きた。
「うわっ!」
「暴れないでくれたまえルーファス君、輸血中だ」
「輸血とかいいから、早くこの針抜いて!(気絶してる間に変なことされてないかなぁ、心配だ)」
「ルーファス君の頼みとあれば仕方ない」
 本当に仕方なさそうにディーは輸血の針を抜き、その抜いた傷口を突然舐めた。思わず反射的にルーファスは腕を振った。
「やめてよ! それやらないでっていつも言ってるじゃん!」
 舐められたルーファスの腕から傷が痕も残さず消えていた。ディーの唾液には治癒効果があるのだ。だが、ルーファスしてみれば、精神的に傷付く。
 ルーファスは冷や汗を袖で拭いて、辺りを見回した。
 病院のスタッフたちが怪我人たちをその場で手当てしている。慌しくはあるが、大騒ぎというほどではない。壊した家々を残してエロダコは姿を消していた。
「エロダコはどうなったの?」
 ルーファスはディーに尋ねた。
「都の中心に向かっていると思われたが、急に進路を変えてシモーヌ川に向かったそうだ」
「カーシャは?」
「あの生物を追って行ったようだな」
 ディーがなにか気配を感じて後ろを振り向いた。
 こっちに誰かが走ってくる。
「やっと見つけたぁ!」
 ツインテールをジタバタさせながら走ってきたのは、置いてけぼりをくらったビビだった。
「アタシのこと置いてくなんてヒドイよぉ(アタシが止める間もなくホウキに乗って行っちゃうんだもん)」
 少し怒ったようすでビビは頬を膨らませた。
 ルーファスは困った顔をして眉をハの字にした。
「いや、あの私がさ置いていったわけじゃなくて、カーシャが無理やり……ね?」
 しどろもどろで弁解するルーファスだが、プンプンのビビは頬を膨らませたままだ。
「追いかけて来るの大変だったんだからぁ。アタシまだここの道とかあんまし覚えてないし、迷子になりそうになったんだからね!」