小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

魔導士ルーファス(1)

INDEX|58ページ/110ページ|

次のページ前のページ
 

未知との遭遇1


 玄関のベルが鳴り、ルーファスはドアを開けた。
「ルーちゃんあーそぼ♪」
 現れたのは今日も笑顔全快のビビ。
 ルーファスはあからさまに嫌そうな顔をした。
「明日、追試があるから勉強しなきゃいけないんだ(昨日もロクに勉強できなかったし)」
「え〜っ、勉強なんてしなくても結果は同じだよ」
「それってどういう意味?」
 ビビはひとつ咳払いをして、ファウストのモノマネをした。
「赤点決定だ!」
「追試で赤点なんてシャレにならないから(今のモノマネぜんぜん似てないし)」
「いいじゃん、遊びに行こうよ!」
 ビビに腕を引っ張られたルーファスが苦痛を浮かべる。
「うっ!」
 決してビビが怪力だったというわけではない。
「どうしたのルーちゃん?」
「筋肉痛なんだ(運動した覚えなんてないのに)」
 ローゼンクロイツが出てきた夢を見た後から、どういうわけか筋肉痛だった。
 筋肉痛だって言ってるのに、それでもビビはルーファスを外に連れ出そうとする。
「筋肉痛くらいじゃ死なないから平気だよ」
「死ぬか死なないかって極端だし、追試の勉強があるって言ってるじゃないか」
「アタシいいこと考えちゃった!」
 自慢げに鼻を鳴らすビビ。物凄くイヤな予感がする。
 ルーファスは無言で玄関を閉めて、ビビを外に閉め出した。もちろんカギも掛けた。
 これでビビが?いいこと?を言う前に防げた。
 でも代わりにドアの向こうでビビが喚き出した。
「ひっどーい! ルーちゃんバカ、シネ!」
 ドアを殴る蹴る。家ごと壊しそうな勢いだ。
 ルーファスは聴こえないフリをしてソファに座った。
「あー聴こえない聴こえない」
 両耳を塞ぐと、本当に聴こえなくなった。
「……あれ?(案外すぐに諦めた?)」
 が、ルーファスの前に現れるピンクのツインテール。
「ちゃちゃ〜ん、ビビちゃん登場!」
「うわっ!」
 驚いたルーファスはソファごとひっくり返った。床に後頭部も打ってこれは痛い。
 倒れたままのルーファスの真横に立つビビ。ミニスカからパンツが見え……。
「ルーちゃんのえっち!」
 スカートを押さえたビビは手短な魔導書を投げた。もちろんルーファスの顔面にヒット。
「ぐわっ!」
 これも痛い。
 顔面強打、後頭部強打、筋肉痛も酷い。どういうわけかルーファスは日ごろから怪我が耐えない。
 ソファを直すルーファスも辛そうだ。
 やっとのことで直したソファに腰掛けるルーファス。目の前にはビビ。こうなったら、もう?いいこと?を聞くしかない。
 どうやって家に侵入したか、それを聞かないのは、侵入されることがごく日常の出来事だからだ。どっかの誰かさん、具体的に言うとカーシャのせいで。
「でさあ、いいこと考えたってさっき言ってたけど……?」
「聞きたい? どうしてもって言うなら教えてあげてもいいかなぁ」
「じゃあ教えてくれなくていいよ」
 と、ルーファスが言った瞬間、ビビは空のマグカップを握って振り上げた。無言の脅しだ。しかもビビちゃん満面の笑み。
 ルーファスは顔を引きつらせた。
「お、教えてくださいお願いします(ってなんで頼んでるんだ)」
 それは脅されてるからだ。
「では、発表します! アタシがルーちゃんの筋肉痛を直してあげる!(一度、人の身体をボキボキって鳴らしてみたかったんだよねー)」
 整体っていうか、ビビがやったら粉骨。そもそも筋肉痛は整体じゃ治らない。
「丁重にお断りします。私はこれから勉強があるんだ、さっ、帰った帰った」
「ええ〜っ、ルーちゃんガリ勉じゃないじゃん」
「今日はガリ勉なの(新年度早々追試を落とすなんて絶対ありえない)」
「だったらアタシが追試の勉強に付き合ってあげる!」
 嫌な顔をしたままルーファスは無言になった。
 ルーファス1人でもトラブルメーカーなのに、ビビがいたら何が起こるかわからない。
 しかも、追試とは――召喚術の追試だ!
 思い起こせばそれがビビとの出逢い(出遭い?)だった。まだビビがやって来て1ヶ月も経たないが、あ〜んなことやこ〜んなこと、いろいろなことがあった。
 今回の追試は、実は再追試だったりする。ビビが召喚してしまったのが、1回目の追試だった。それを泣きの1回で、再追試が行なわれることになったのだ。ああ見えてファウストは実は甘い。
 だから!!
 絶対に今回の追試を落とすわけにはいかなかった。まあ1つくらい赤点を取ってもまだ後があるが、そんな気持ちだからルーファスは毎年進級時期になると、死にそうな苦労をするのだ。
 なので、毎年新年度がはじまって1ヶ月くらいは気合が入っている。今年はその気合がどこまで続くことやら?
 ルーファスはビビの身体をクルッと180度回転させて、そのまま肩を押して玄関へ直行。
 『えっ? なに?』みたいな顔をして、目をパチパチするビビ。そのまま玄関から出せれ、再び鍵を閉められた。
「ふぅ」
 ひとまずため息を付くルーファス。が、すぐにビビが部屋の中から走ってきた。
「どうして外に出したの!」
 ほっぺたを丸くして、ビビは頭から湯気を出していた。見るからにご立腹だ。
 ルーファスはビビをナメクジみたいなじと〜っとした眼差しで見た。
「だからぁ、勉強があるから……邪魔なの」
「がびーん!(邪魔!?)」
 邪魔? じゃま? パジャマ!?
 たったひとことがビビの胸に突き刺さる。
「ルーちゃんのばか……ぐすん」
 目じりに手を当てながらビビは走り去ってしまった。窓の外へ。
 残されたルーファスは難しい顔をした。なにがなんだかサッパリなのだ。乙女心は複雑なのだ。
「…………(なんでバカって言われたんだろう?)」
 まあ、とにかくこれで独りなれたわけだ。ルーファスはさっそく勉強……気配を感じて、ルーファスは振り向いた。
「……っ!(まだいたのか)」
 窓枠に両手を乗せて、鼻から上を覗かせているビビ。その瞳は睨むような感じでルーファスを見ている。
 ルーファスは深く頷いた。
 うん、見なかったことにしよう♪

 ルーファスの家の地下室はだだっ広い。敷居などはなく、壁際に棚が並べてある程度で、家具なども特にない。
 この地下室はルーファスが越してくる前からある物で、どうやら前にこの家に住んでいたのは魔導師だったらしく、魔導の実験や実践をするために、この地下室を作ったらしい。
 地下室の壁などは特別な鉱石で造られており、並大抵な攻撃では破壊もできない。ルーファスはここで何度も爆発事故を起こしているが、一度も壁が傷付いたことはなかった。
「よし、やるぞ!」
 ルーファスは気合を入れた。その脇には魔導書が抱えられ、もう片方の手は水生ペンキを持っていた。
 教科書や魔導書をいくら読んでも、実践ができなくては意味がない。その結論に至ったルーファスは、明日の追試試験と同等レベルの召喚を試みることにしたのだ。
 果たしてルーファスは無事召喚を成功させることができるのか!
 と、いうわけでまずは下準備だ。
 はじめにすることは、召喚術に必要なグッズを用意することだろう。
 高度な召喚には、それなりの道具が必要である。道具は召喚によって異なり、代用品も使えるが、やはり正規の道具のほうが失敗は少ない。