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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

INDEX|40ページ/110ページ|

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 ペット扱いされたルーファスは怒りを露にするが、首を引っ張られて息を詰まらせた。
「うっ!(苦しい)」
「行くよ、タロウ(ふあふあ)」
 名前変わってるし!
 ぶっちゃけ、なんでもいいのだろう。
 ローゼンクロイツに引きずられるルーファスを見ながら、アインはニヤニヤしていた。
「ご主人様とペット……萌え〜」
 趣味が怪しい路線に入っている。
 抵抗しても首が絞まるだけなので、ルーファスは仕方なく鎖を引かれた。
 丘をどんどん登り、頂上がそこまで迫ってくると、不気味な悲鳴が聴こえた。
「コケコッコー!」
 かなり不気味な悲鳴だ。誰の悲鳴なのかは見なくてもわかった。
 続けて悲鳴第2弾
「ブヒーッ!」
 こっちも誰の悲鳴かすぐにわかった。
 まるで動物鳴き声当てクイズだ。
 クック&ロビンの悲鳴を聴いて、アインは内心ホッとした。
「(よかった、まだ生きてた。死んでなければ見捨てたことにならない、あたしルール)」
 頂上に3人が到着すると、クック&ロビンは湖の周りをドラゴンと追いかけっこしていた。
 ドラゴンは四つの足で走り、口からは炎を吐いていた。
 ニワトリとブタの丸焼きは目前だ!
 でも、二足歩行するニワトリとブタは食べるのに気が引ける。ニワトリは元々二足歩行だけれど。
 空に逃げれば助かるだろうに、かわいそうなことにクックはニワトリ人間だった。
 飛べない鳥の代表ニワトリ。
 ドラゴンの吐いた炎がロビンの尻を撫でた。
「ブヒーッ!」
 おいしそうな匂いが辺りに漂う。
 ジュルっとアインはヨダレを拭った。
「美味しそう(お肉最近食べてない)」
 バイトで授業費を稼ぐアインの私生活が垣間見れた。
 見ているだけで自分たちを助けようとしない3人組にクックが叫んだ。
「助けろコンチキショー!」
 いつもならここでロビンが続くのだが、鼻息ブーブー息絶え絶えでそれどこじゃなかった。
 助けろと言われた3人組は動こうとしなかった。
 ルーファスは、
「危ないし」
 ローゼンクロイツは、
「……関係ない(ふにふに)」
 アインは、
「(早く焼けないかなぁ)」
 食う気満々だった。
 クック&ロビンがルーファスに向かって来る!
 当然、ドラゴンも向かってくる!
 ルーファス逃げる!
「助けて! 助けてローゼンクロイツ!」
 助けてくれるかは別として、メンバーの中では実力ナンバーワンだ。
「仕方ないなぁ(ふあふあ)」
 ローゼンクロイツは日傘を剣のように構えた。
「ライララライラ、宿れ光よ!(ふにふに)」
 古代呪文ライラによって、日傘に聖なる光が宿った。
 ルーファスの真横を抜ける蒼い風。
 疾風はクック&ロビンの横も抜け、ドラゴンの真後ろに回った。
 振り下ろされる光の剣。
 閃光は連続して放たれて、輪切りにされたドラゴンの尾が山積みされた。
 華麗なる包丁さばき……じゃなかった。剣さばきだ。
 ローゼンクロイツが肉弾戦で戦う姿を見て、アインはちょー感動していた。
「萌え〜っ!! ローゼンクロイツ様って足も速かったんですね!」
 まさに瞬く間に駆けたローゼンクロイツは、一瞬にしてドラゴンの尾を輪切りにした。
 ルーファスは別に驚くわけもなかった。
「そうだよ、ローゼンクロイツは私の逃げ足より早いよ」
「だってローゼンクロイツ様が徒競走で堂々と歩くのは伝説じゃないですか!(しかも聞いた話によると日傘まで差してたとか)」
 ローゼンクロイツ伝説のひとつだった。
 大地を揺らし、炎を吐くドラゴン。尾を斬られてかなり激怒している。
 が、ローゼンクロイツはそんなことなど気にせず、黙々と次の攻撃の準備をしていた。
 日傘をバットのように構え、振りかぶった!
 積み重ねられてダルマ落とし状になった輪切り肉を打つ!
 打つ!
 打つ!
 そして、また打つ!
 ぶっ飛んだ輪切り肉はドラゴンの顔面に連続ヒット。
 よろめいたドラゴンが後ろ足を引いた瞬間、ドラゴンが冷や汗たらり。後ろ足は宙に浮いていた。
 切り立った崖からドラゴン転落。
 雪が積もってたら、雪だまになっちゃうよくらいの勢いで、崖を転がって落ちていった。
 さようならドラゴンさん。ご冥福お祈りいたします。
 ドラゴン退治完了。ローゼンクロイツは強かった。
 そんなこんなでクック&ロビンは財宝を手に入れようと湖に近づいていた。
「アニキ、ついに財宝がポクたちの手に!」
 お尻が焦げているのも忘れ、ロビンは鼻息荒く気合が入っていた。
 もちろんクックも気合十分だ。
「おうよ、湖の底に沈んでる財宝を湖の精に頼んで貰おうぜ!」
 そんな話そっちのけで、ローゼンクロイツは湖の周りに生息している草木を見ていた。
「……見っけ(ふにふに)」
 七色をした小さな木の実。それはまさしく薬草全集に載っていたレインボーマタタビだった。
 アインはローゼンクロイツの後ろから、レインボーマタタビを覗き込んだ。
「それを何に使うんですか?(図鑑には猫の霊をとか書いてあったような気がするけど?)」
「この実を分析しゅて、逆の効果を得る薬を作るんだよーよーよー(ふあふあ)」
 突然、ローゼンクロイツは顔を真っ赤にしてフラフラしはじめた。
 マタタビに酔ったのだ。
「ひっく!(ふにゃ)」
 しゃっくりみたいに肩を上下させ、ローゼンクロイツは顔面から地面にダイブ!
「大丈夫ですか!!」
 慌ててアインがローゼンクロイツを抱き起こそうとしたが、その手が不意に固まる。
 ピンチなのはわかっているのに……。
「ネコミミ萌え〜!」
 アインは叫んだ。
 ローゼンクロイツの頭に生えたネコミミ。
 今回はクシャミなしで、マタタビパワーによって変身。
 むくっとローゼンクロイツは立ち上がった。
 足取りが明らかに怪しく、顔は真っ赤に酔っている。耳やしっぽの先までほんのり赤い。猫返り酔拳モードだ!
 いつもよりもクネクネ動く『しっぽふにふに』と、顔を真っ赤にして千鳥足のねこのぬいぐるみよる『ねこしゃん大行進』の豪華2本立て。
 しっぽふにふにの電流を喰らって、クック&ロビンが感電しながら湖に落ちた。
 その瞬間、湖から水飛沫を上げて薄着の女性が飛び出してきた。
「ぎゃー!」
 女性は身体をビリビリさせながら、丘を駆け下りていった。
 その女性が湖に住む精霊なんて、誰も知る由もなかった。
 自由気ままに、しかも今日はいつも以上に予想できない動きをするねこしゃんとしっぽ。
 しっぽがねこしゃんを叩き、爆発を次から次へと起こしていく。
 そして、全てのねこしゃんに飛び火。
 ドーン!!
 丘の頂上が大爆発して噴火したように水飛沫が上がった。
 その水飛沫の間から、キラキラ光る黄金の輝きが?
 まさか、あれが財宝!
 それがルーファスの最後に見た映像だった。

 机の上で伏せていたルーファスがビクッと目を覚ました。
「……夢っ!?」
 追試試験の予習をしようと、机に向かっているうちに、いつの間にやら寝ていたらしい。
「なんかリアルな夢だったなぁ」
 加えて、なぜか全身が痛い。
 あれは本当にただの夢だったのだろうか?
 その頃ちょうど、魔導学院の医務室でアインは目を覚ました。
「ローゼンクロイツ様!?」