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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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空色ドレスにご用心4


 森の入る前から、島の中心に高い丘がるのが見えていた。
 そこへローゼンクロイツは向かうのだと言う。
「なんで?」
 と、ルーファスは尋ねた。
「あっちに何かあるような気がする(あふあふ)」
 漠然としない答えが帰ってきた。
 ?何か?とはいったい何か?
 無人島の定番といえば、海賊の隠した財宝やそれを守る怪物?
 ふと、アインは昔読んだ小説を思い出した。
「昔『宝島』という小説読んだことありますよー」
 その話にルーファスは乗った。
「知ってる知ってる、洞窟に隠された財宝をドラゴン守ってる話でしょ。財宝に取り付かれた人間が欲のあまりドラゴンになったとか?」
「違いますよ」
 アイン否定。ルーファスは話に乗れなかった。
「ドラゴンなんて出てきませんし、財宝は丘の上にあるんですよ」
「そうだっけ?(あれ〜、だったら欲深いドラゴンが出てくるのなんだっけ?)」
 ルーファスの悩みはローゼンクロイツが解消した。
「ルーファス、それ小説じゃなくて伝承(ふあふあ)。ファブニルという猛毒を持ったドラゴンの話だよ(ふにふに)」
「あーそれそれ、たぶんそれ(のような気がする)」
 なんて雑談に花を咲かせようとしたていとき、3人の足が急に止まった。
 ドドドドドドッと走ってくる音が後方から聞こえる。
 振り返るとノッポとチビの2人組みがこっちに近づいてきた。
 ノッポは羽こそ見えないが、どう見ても首から上がニワトリだ。もう片方のチビはシャツから飛び出た出べそを覗かせ、巨体をゆっさゆっさ揺らし、首から上は控えめに見てもブタだった。
 ルーファスたちに追いついてきたニワトリマンは、ビシッと白い羽に覆われた手で指さした。
「おまえら、オレたちの財宝を横取りする気だな!」
 ブヒブヒ息を切らせたブタマンも追いついてきた。
「アニキの言うとおりだ。おまえら、ポクたちの財宝を横取りする気だろ!」
 ルーファスは呆気に取られ口をポカーン。
「はぁ? 財宝ってなに?」
 ルーファスが不思議な顔で尋ねると、ニワトリマンがトサカを立てて詰め寄ってきた。
「財宝っていったら、丘の上にある財宝に決まってるじゃねえか!」
「アニキの言うとおりだ!」
 ブタマンが言った。
 そんなこと言われても、別に財宝を探しに来たわけでもなく、ローゼンクロイツがなんとなく歩くほうにみんなで歩いてただけだ。
 が、すでにアインの目は輝いていた。
「財宝って本当ですか? ローゼンクロイツ様財宝ですって聞きましたか!?」
「……興味ない(ふあふあ)」
 さらっとローゼンクロイツは流した。
 だが、ニワトリマンとブタマンは信用してない。
「はは〜ん、オレたちをそうやって油断させる気だな?」
「だなー!」
 させる気もなにも、最初から財宝目当てではない。
 だが、ニワトリマンとブタマンは疑いを深める。
「オレたちクック&ロビンを出し抜こうなんて甘いぜ」
「甘いぜ!」
 威勢良く決めたところで、アインが質問。
「あの、お2人は何なんですか?」
 この質問にクック&ロビンはショック!
「オレたちクック&ロビンを知らないだと?」
「知らないだとー!」
「オレたちは世界を股に掛けるとトレジャーハンターだ」
「だー!」
 トレジャーハンターとは、簡単にいうと宝探しを生業にしている人たちのことだ。
 宝探し――それは男の夢とロマン!
 クック&ロビンは3人組みを追い抜いて走り出した。
「宝はオレたちがいたたくぜ、あばよ!」
「あばよー!」
 後姿がどんどん小さくなって見えなくなった。
 ルーファスがボソッと。
「なにあれ?(変な人たち)」
 トレジャーハンターだ。ニワトリ人間とブタ人間のコンビの。
 アインは目を輝かせていた。
「この島に財宝があるんですね! きっと大海賊の船長が『処刑の瞬間に、オレの財宝を見つけられるもんなら見つけてみな!』なんて遺言を残した財宝に違いありませんよ!」
 あくまでアインのモーソー。
「あたしたちも早く行きましょう!(金銀パール、もしかしたらもっとスゴイものかも!)」
 財宝を探したくてウズウズ。
 でも、ルーファスとローゼンクロイツは探す気なし。
「あの2人の言ってたこと信用できないよ(ノリからして胡散臭い)」
「……興味ない(ふぅ)」
 でも、アインはめげない子。
「宝探しは男のロマンなんじゃないんですか!」
 うぇ〜ん、と大粒の涙をこぼしながらアインは走って行ってしまった。
 ルーファスはローゼンクロイツと顔を見合わせた。
「どうする?」
「なにが?(ふあふあ)」
「なにって、アイン行っちゃったよ」
「うん、知ってる(ふあふあ)」
「知ってるじゃなくて、1人で行かせていいの?」
「知らない(ふあふあ)」
「知らないとかじゃなくてさー」
「じゃ、知ってる(ふあふあ)」
 絶対考えて返答してない。
 スタスタとローゼンクロイツは歩きはじめた。アインが泣きながら走って行った方向だ。だが、アインを追うためではなく、はじめからそっちに進んでた方向だからだ。

 男のロマンを男にわかってもらえず、13歳の乙女アインは泣きながら走っていた。
 森を抜け、小高い丘を猛ダッシュで駆け上る。足腰が丈夫なアインだった。
 そうしてしばらく走るうちに、丘の頂上に到着してしまった。
 丘の上には大きな湖があり、巨大な影と2人組みがいた。
 クック&ロビンを発見!
 しかも、2人はドラゴンに襲われていた。
 トカゲを大きくしたような地竜が暴れ回っていた。
 身長の高いクックよりもドラゴンの頭は上にあり、全長はクックの3倍以上もありそうだ。
 アインは見てみないフリをした。
「あたしはなにも見てません、ごめんなさい!」
 そして、ドラゴンに襲われている2人を見捨てて逃亡。
 丘を全速力で駆け下りた。昇るときの1.5倍のスピードだ。
 3分の2くらい下ったところで、アインは2人を発見した。ルーファスとローゼンクロイツだ。
「助けてくださいピンチです!」
 大声をあげてアインは駆け寄る。
「なにかあったの?」
 首をかしげてルーファスが応じた。
「クック&ロビンさんがドラゴンに襲われてます!」
 それを聞いたルーファスは凍った。顔が青くなってしまっている。
 少しして解凍したルーファスは無言で丘を下りはじめた。のを、ローゼンクロイツが袖をグイと引っ張って止める。
「行くよ、ルーファス(ふあふあ)」
「ウソだろ、なんで行かなきゃいけないんだよ」
「用事があるからに決まってるだろう(ふあふあ)」
「じゃあ私はここで待ってるから、頑張ってよ」
 自ら危険な場所に飛び込みたくない。けれどローゼンクロイツはルーファスの裾を放さない。
「行くよ(ふあふあ)」
「ヤダ」
「行くよ(ふーっ)」
「絶対イヤだ」
「行くよ(ふーっ!)」
「絶対にヤダからね!」
 ついにルーファスは地べたに座り込んだ。
 ローゼンクロイツはそれを無言で見つめ、突然魔導を放った。
 放たれたのは白銀に輝く魔導のチェーン。拘束魔導のエナジーチェーンだ。
 エナジーチェーンはルーファスの首に巻かれた。
「行くよ、ポチ(ふあふあ)」
「ポチじゃないし!」