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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

INDEX|26ページ/110ページ|

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 人為的に切り取られたであろう四角い穴。先に進む道はそこしかなさそうだ。
 ビビはジャンプをして穴に手を伸ばそうとするが、到底届きそうもない距離だ。肩車をしても無理だろう。
 腕組みをしてルーファスが唸った。
「う〜ん、他に入り口があるのかな」
「この部屋に仕掛けがあるのかもしれないな」
 そう言って、クラウスは仕掛けを探しはじめた。
 それに続いてカーシャも部屋を隈なく探しはじめる。
「ファウストが先にこの塔に来ていると仮定すると、最近になってついた痕跡が残ってるやもしれんな」
 塔の周りの草木が伐採されていたように、真新しい痕跡がこの部屋にも残っている可能性がある。
 ビビは壁に出っ張りを見つけた。
「ここに出っ張りがあるよ」
 とりあえず押してみる。
 別の部屋から物音が聞こえたと思った瞬間、ルーファスの眼前を矢が横切った。
 目を丸くしたままルーファスフリーズ。
 満面の笑みを浮かべるビビ。
「きゃは、失敗失敗♪(危うくルーちゃん殺すとこだった)」
「私のこと殺す気?」
 目を細めて自分を見るルーファスに、ビビは首を大きく横に振った。
「そんなわけないじゃん、アタシがルーちゃんの魂を貰うのは契約のときだけだよ」
「だってさっきお腹すいたって喚いてたじゃん」
「あ、そういえば……お腹空いたぁ」
 ぐぅ〜っと、ビビのお腹が鳴いた。
 クラウスは袖をまくり、魔導式腕時計で時間を確かめようとした。外部から魔導を遮断する最新モデルだ。これで外部の魔導や磁場から狂わされることがない。
「もう2時過ぎだ」
 今から学院に戻っても放課後になってることは間違いない。なんだかんだで、1日丸まるサボってしまった。ちなみにビビは初学食を食べ損ねた。
 また別の部屋から物音が聞こえた。
 矢が飛んでくるのかとルーファスは身構えたが、それは上から落ちてきた。
「ぎゃっ!?」
 ルーファスは間一髪で飛び退いた。
 上から落ちてきたのはハシゴだった。
 あの四角い穴からハシゴが降りてきたのだ。
「うむ、こちらが正解だったようだな」」
 出っ張った石を押し終えたカーシャが呟いた。
 カーシャはじーっとルーファスとクラウスを睨んでいる。先に登れの合図だ。
 そんなのヤダよぉ〜っとルーファスが首を振る。
 ならば僕が行こうとクラウスがハシゴを登りはじめた。
 続いてビビがハシゴを登ろうとした。
「次アタシ登るねっ!」
 少し登ったところでビビは下からの熱い視線を感じた。
 ……パンツ見られた!?
 ルーファスは上を見ていた顔をすぐに下に向けた。
「見てない、見てない!(本当は見たけど)」
「ルーちゃんのエッチ!」
 ビビちゃんキック炸裂!
「ぐはっ!」
 顔面に蹴り喰らってルーファスは床に沈んだ。
 そんなルーファスなど放置プレイで、さっさとカーシャもハシゴを登っていってしまった。
 いち早くハシゴを登ったクラウスは辺りを見回した。
 また同じような大きさの部屋だ。けれど、今度は出口がすぐそこにあった。出口は塔の外に続いている。
 先走った気持ちを抑えられず、クラウスはすぐに出口を飛び出した。
 塔の側面に沿って続く螺旋回廊。
 緩やかな傾斜の廊下が、塔の周りを何周もしながら頂上まで続いている。
 横幅はひと2人が通れるほどだが、壁がなく足を滑らせれば塔の下にまっ逆さまだ。
 塔を登るクラウスの耳に誰かの叫び声が届いた。
「ぎゃぁぁぁ!!」
 塔の下を見るとルーファスが落ちていくのが見えた。
 さよならルーファス、君のことは忘れない。
 クラウスは再び走りはじめた。
 なぜルーファスが落ちたのか、はたしてルーファスは無事なのか、その話は完全に素通りだった。
 ついでにクラウスをカーシャが素通りで通り越した。
 何気にカーシャ足速い。
 そのままカーシャは1位で頂上に到着。と、いきたいところだったが、頂上には先客がいた。
 2人の人影を見てカーシャは呟く。
「オル&ロスか……(ファウストの犬め)」
 赤い法衣と青い法衣を着た双子の兄弟。学院の強硬派ファウストのシンパだ。
「ファウスト先生の読みが当たったなロス」
「そのようだなオル」
 オル&ロスは左右対称に魔力増幅器のロッドを構えた。
 この場所でカーシャは待ち伏せされていたのだ。
 すぐにクラウスが追いついてきた。
「おまえたちロッドを置け、無用な戦いはしたくない!」
 クラウスの言葉にオル&ロスは顔を見合わせた。
「聞いたかロス?(クラウスまでいるのか)」
「いや聞こえなかった(厄介だな)」
「オレもだ(行くぞロス!)」
 示し合わせたようにオル&ロスが先に仕掛けてきた。
 2体2の戦いがはじまろうとしていた!
 が、そんな中に第三者が現れる。
「もぉー疲れたよぉ!」
 やっと頂上に辿り付いたビビだった。
 ビビは周りの戦いなどシカトで辺りを散策している。
「わぁ、すっごーいコレ見て見て♪」
 誰も見てくれなかった。
 赤い光や青い光が辺りに飛び交い、戦いの真っ最中でそれどころではないのだ。
 ビビが見たものは、塔の頂上にあった円形の池のようなものだった。池に満たされているのは水ではなく、夜空色をした液体だった。液体は黒く、時おりキラメキが星のように流れる。
 誰もかまってくれないので、ビビは辺りを歩き回り、階段発見!
「ねぇ、ここに階段あるよ?」
 やっとここでオル&ロスがビビの存在に気付いた。
「「しまった」」
 双子ならではのシンクロ発言。
 階段を下りようとするビビを阻止しようとオル&ロスが動く。
 しかし、その前に立ちはだかるカーシャ!
「逃がさんぞオル&ロス!」
 道を阻まれたオル&ロスの後ろにはクラウスも迫っていた。
「僕のことも忘れるな!」
 そして、もうひとり忘れちゃいけない人物がひとり。
「あーっ!! やっと頂上に着いたよ。ってみんななにやってんの?」
 全身びしょ濡れのルーファスだった。