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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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ドカーンと一発咲かせましょう1


 教壇に立ったカーシャが咳払いを一つ。
「コホン、今日はクラスの新しい仲間を紹介する」
 カーシャの視線がドアに向けられ、クラスの目もそっちに向けられた。
 ばーん!
 と勢いよくドアが開けられ、小柄な影がクラスに飛び込んだ。
「イエーイ! ビビちゃんで〜す!」
 仔悪魔ビビ、クラスの召喚!!
 それを見たルーファス驚愕!!
「な、なななななーっ!(ビビがどうして!)」
 声をあげたルーファスは無視で、転校生恒例の自己紹介がはじまる。
「えっと、アタシの名前はシェリル・B(ベル)・B(バラド)・アズラエル。愛称はビビよろしくね♪ これでも魔界ではちょ〜カワイイ仔悪魔でちょっとは名前が知られてます。好きな食べ物はチョコレートとラアマレ・ア・カピス。好きな音楽のジャンルはヘヴィメタルとか、あとね――」
 パコン!
 カーシャの平手打ちがビビの脳天に炸裂!
「いった〜い!」
「もういい、さっさと席に座れ」
 ほっぺを膨らませ、ビビはカーシャの言うとおり席に座った。
 もちろん席はルーファスの真横だ。
「ルーちゃんクピポー!」
「クピポーってなにそれ……じゃなくって、なんでビビがここにいるのさ?」
「クピポーって挨拶流行ってるらしいよん」
「そこは置いといて、なんでビビがここにいるのさ?」
「ああっと、それはねぇ」
 黒板方向からマジックチョークがルーファスに飛んできた。
 パチコーン!
 見事ルーファスの脳天に直撃。的が描いてあれば100点満点だ。
 マジックチョークを投げたのはカーシャだった。
「ルーファスうるさいぞ、赤点だ」
「はぁ!? ちょっと待ってよ、ビビだってしゃべってたじゃん!(てーゆか、回りもいつも以上にざわめいてるぞ?)」
 ルーファスが辺りを見回すと、周りの生徒たちの視線が痛いほどにルーファスとビビに向けられていた。
 からかうように指さす者や、ひそひそ話にピンクの花を咲かしている者もいる。みんな注目の美少女転校生と、ルーファスのカンケイが気になっているのだ。
 弁解しようとルーファスが席を立って、机を両手でバンと叩く。
「ちょっとみんな勘違い――イイイッ!?」
 パチコーン!
 カーシャのチョークがルーファスの脳天炸裂。
「うるさいぞルーファス(女のことで焦るなんて、ルーファスもまだまだだな……ふふっ)」
 おでこを赤くしたルーファスは静かに着席した。
 これ以上ここで話を進めるのは得策ではないと、やっと今さら気付いたのだ。
 そんなこんなで朝のホームルームが過ぎ去り、ルーファスがいろんな意味で頭を痛めていると、クラスの男子たちがルーファスとビビの回りに殺到。
「ルーファス、その子おまえのなんなんだよ?(まさかルーファスの彼女!)」
「ビビちゃんっていうんだ、家どこなの?」
「俺もヘヴィメタ好きなんだ、友達になろうよ!」
「ルーファス、おまえだけは俺たちの仲間だと思ってたのに、呪い殺してやる!!」
 いろんな声が飛び交う中、壮麗な服に眉目秀麗な顔が乗った男子生徒が一括する。
「君たち、ルーファスもビビも困ってるだろ!」
 この者の言葉で、周りは一気に落ち着きを取り戻し、みんな不貞腐れながら席に戻っていった。
 周りを一掃し、1人この場に残ったのはクラウスだった。
「してルーファス、ビビとの関係を洗いざらい吐いてもらおうか?」
「クラウスもぉぉぉっ!?」
 声を張り上げてルーファスは机に突っ伏した。
 周りを追い払ったのは、自分が直接聞きたかったかららしい。
「寄ってたかって質問されるのは大変だろうと思って、僕が代表として質問するべきだと考えたんだよ」
「クラウスさぁ、国王なんだからそんなマネしないでよぉ(ホント、自覚が薄いんだよねぇ)」
 ルーファスが釘を刺したとおり、クラウスは現アステア王国の国王なのだ。
 国王が周りを追い払って自分だけが――となると、偉さを鼻にかけて嫌なヤツを思われがちだが、クラウスはそんなを感じさせない物腰を持っている。
 美麗な顔立ちに柔和な優しさが浮かび、今みたいな行為をしてもユーモラスと女子生徒に言われるだけだ。そう、人間顔が命なのだ。
 ルーファスのセリフを受けて、クラウスは少しツンとした。
「国王っていうのはなしだよ。いつも言っているだろう、学院内や友達同士で集まってるときは、国王だということを忘れてくれって」
 クラウスの趣味は城下をお忍びで歩くことなどで、普段から高い位置からではなく、同じ目線で国民と向き合うことをモットーにしている。そのためか、国王扱いされることが嫌いらしいのだ。
 親しみを込めた笑みでクラウスはビビに握手を求めた。
「僕はクラウス・アステア。ルーファスとは魔導幼稚園から友達なんだ」
 ニッコリ仔悪魔スマイルでビビはクラウスの手を握った。
「アタシはビビ、よろしくね♪(ちょーイケメンだ)」
 2人が握手を交わしているとき、ちょうど授業開始のベルが鳴った。
「またあとでじっくり話そう、じゃあねビビ」
 キラースマイルでクラウスは別れを告げ、自分の席に戻っていった。
 授業さえはじまってしまえば、ビビと自分から注目が薄れると、ルーファスはほっと胸を撫で下ろした。
「(まだ授業はじまってないのにドット疲れた)」
 ベルが鳴り終わると同時に、規則正しい時間で教室にパラケルススが入ってきた。いつも時間にきっちりしている先生だ。
 1時間目の授業はマジックポーションの授業。
 医学や錬金術などを得意とするパラケルススは、この授業の権威である。ちなみにルーファスは、難しい原子配列や公式を覚えるのが苦手だったりする。
 授業がはじまってすぐに、ビビからルーファスに手紙が回ってきた。
 女の子から手紙をもらうのは数年ぶりのルーファス。意味もなくドキドキしながら手紙を開いた。
『さっきのルーちゃんの質問なんだけど、パラケルスス先生が留学生扱いでこの学校に入れてくれたの、いいでしょー』
 すぐにルーファスは手紙の返事を返した。女の子との文通(?)はこれがはじめてだ。
『この学校入るの難しいんだよ、なんでそんな簡単に入れるの?』
『えぇ〜、ルーちゃんだって入れたんだからアタシだって入れるよ』
『もちろん筆記とか実技試験したんだよね?』
『するわけないじゃん』
『そんなのズルイよ。あとでパラケルスス先生に抗議する!』
 丸めた紙がビビから投げられ、ルーファスは中を開いた。
『ルーちゃんのばかぁ!』
「バカってなんだよ!」
 ついつい声に出してしまったルーファス。シーンとしたクラスで注目を集め、ルーファスは気まずくなって顔を真っ赤にした。
 そして、パラケルススが一つ咳払いをした。
 ルーファスは肩を落として俯いた。
「(なんで僕だけがまた怒られなきゃいけないの)」
 静かになった教室で再び授業が再開しようとしたとき、大声をあげてカーシャが教室に飛び込んできた。
「おいパラケルスス、緊急事態だ!」
「授業中じゃぞ。おまえも授業中のはずじゃが?(カーシャが慌てるとは珍しいのぉ)」