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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 3 私をそろばんずくにして

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 春樹は軽自動車を買っていた。一応、残価設定型の60回ローンで買った新車である。残価設定型というのは、60分割での支払い完了後に、つまり5年後になるのだが、その車を下取りしてもらう約束で、その下取り額まで50%値引きして組まれた、一見お得そうなローンのことである。もし、その時にそのまま乗り続けたければ、買い取ればいいし、新車に乗り換えたければ、新たにローンで買えばよさそうにも思える・・・・・・しかし、今はとにかく、恵美莉を乗せたかっただけなのだ。

「通学に自転車買うって、言ってなかったっけ?」
「20万のロードバイクでローンしても、毎月の支払いは同じくらいだし」
「総額の問題よ。何倍の期間払うのよ」
「あっと言う間だよ!」
 春樹は見通しのいい直線道路で、ググっとアクセルを踏んだ。ちょっとカッコ付けてみた。
「ねえ、そんなに飛ばさなくってもいいよ(・・・イキりたがりなんだから、ホントかわいいわね)」
「これが気持ちいいんじゃないか」
「ポリさんに掴まったら、罰金高いのよ。それに事故ったらもっと高くつくわよ」
「そりゃそうだな。やめとこう」
春樹がスピードを落とした直後の交差点の歩道脇に、白バイが隠れているのが見えた。
「あぶねぇ、あぶねぇ」
「ちゃんと考えないと。ローンはあと5年もあるんでしょ(長いローンだわ・・・)」
「ああ」
「それまでに利息だけでいくら払う計算になるの?」
「・・・知らないな」
「お得なように見えて、ものすごく高くなってんじゃない? 利息(・・・計算してないの?)」
「そうかな? 利率も低いし、総額の半分のローンだから、安いと思うけどな」