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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影惑い 探偵奇談19

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道の先



四月も後半を過ぎ、進級後の慌ただしさも少しずつ落ち着きを見せている校内。この春二年生になった一之瀬郁(いちのせいく)は、晴れて文系進学クラスにて、想い人ともう一年一緒に過ごせることになった。

隣の席の須丸瑞(すまるみず)。郁の大好きな片思いの相手である。長い手足、涼し気な目元、春の日に透けるミルクティー色の美しい髪。優しくて、見た目よりずっと繊細で。そんなところにもうずっと惹かれている。出会って一年の間に、いろいろなことがあって。
そんな瑞が、この授業中だけは、切羽詰まったような表情で教壇を見つめている。真剣なその姿にはわけがある。彼は、教壇に立つ実習生が怖いのだ。

「…というわけで明治維新というのは、特定の出来事や事件を指しているのではない。いま見てきたように、平和だった江戸時代にさざ波が立ったきっかけ、最中に起きた様々な世間と人々の動き、その結果一つの時代が終わって始まったという、一連の流れを総じて明治維新と言う。俺はこのクラスで、この部分を一か月かけて授業を行うことになる。改めてよろしく」

火曜日三限目の社会科の授業を担当するのは、教育実習生としてこの今日からやってきた瑞の兄、須丸紫暮(すまるしぐれ)である。彼とは冬の終わりに出会い、郁も親交を持った。弓道の有段者であり、郁らが所属する弓道部の指導者としても関わりがある。
紫暮の授業は淡々としているが、不思議とわかりやすかった。歴史は苦手だった郁も、流れを知ることで一つ一つの事件や出来事の背景がわかり、そこにある人々の思いが想像できた。


「でもセンセ―、こんなに苦労して新しい時代になったのに、このあと日本は外国と戦争とかやるんでしょ?頑張った意味なくないすか?」
男子生徒から質問が飛んで紫暮が頷く。

「そうだな。だけどどうしてそうなっていくか、そこに目をつけるのは大事なことだと思う。歴史を学ぶ意味って言うのはあるんだ」

チョークを置いて紫暮が教室を見渡す。

作品名:影惑い 探偵奇談19 作家名:ひなた眞白