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星の流れに(第三部・焦土)

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12. あとがき



『星の流れに』をお読みいただきありがとうございます。
 特にnovelistでお読みいただいた皆様、第一部と第二部で二年も間が空いてしまったのにも関わらず、じわじわと閲覧数が伸びて行くのを見て、モチベーションを奮い立たせることができました、趣味とは言え創作をするものとしては『読んでもらってる』と言う事実は何よりもうれしく、心強いものです。
 タイトルの『星の流れに』は同名の歌謡曲から取りました、作中にも歌詞を引用していますが、『こんな女に誰がした』と言うフレーズで知られる曲です。
 たまたまyoutubeでこの曲を藤圭子さんが歌われているのを聴き、『こういう歌詞だったんだ』と感銘を受けて、色々と調べて行く過程で復員された従軍看護婦さんの投稿を元に書かれた曲だと知り、幸子と言う登場人物が生まれました。
 ただ、ちょっと妙なところもあったのです。 別の作品の参考に遊郭のことを調べていたことがあり、終戦当時、地方では遊郭が臨時の病院として使われ、遊女さんたちも臨時の看護婦補助として働いていたことがあることを知っていましたので、復員された従軍看護婦さんが職にあぶれると言う可能性は低いな、と。
 そして更に当時の遊郭を調べている際に『特殊慰安協会』通称『RAA』のことを知りました。
 東京大空襲のことはそれ以前に調べていましたので、それらが混ざり合って、東京大空襲で九死に一生を得て、生き抜くために、妹を生かすためにRAAに志願する静子と言うキャラクターが生まれたのです、私が調べた限り、RAAに志願した女性の多くは静子のような境遇だったようです。
 静枝は静子と幸子を繋ぐ役割として設定したキャラクターですが、私の母と同世代の設定、子供の頃に戦争を体験した世代を代表する役割も担っています。
 八十代半ばですので、そのくらいの方はまだまだ多くご存命ですが、今お話を聞かなければ十年先にはほとんど不可能になります、その思いから孫の和貴が祖母の静枝から話を聞く、と言う導入部になりました。

 大東亜戦争を書くのは骨の折れる作業です。
 実際に有った戦争ですから、脚色はあるにせよ嘘は書けません。
 小説投稿サイトにアップするだけの、趣味で書いたものでも、読んで頂ける方がいらっしゃる以上は。
 しかも激動の時代ですから、ものの一年で世の中の様相はガラリと変わってしまいます、学校制度一つとっても三、四年で変わってしまいますし、繰り上げ卒業だの編入だのと言う変更は毎年のように行われていました、ですので裏設定として主な登場人物が何年の何月に生まれている、と言うことはきっちりと決めてありました、一年で学校制度が変わってしまいますし、この出来事があった時何歳、と言うことが重要だからです。
 こんなシーンを書きたい、とイメージがあってもそれが事実に反するなら書くわけには行きません。
 幸子のルソン島での日々、これはもう資料がほとんどありません、ルソン島での戦況推移ならば資料が見つかりますが、その時現地の病院はどのようなものだったかと言う資料は非常に乏しく見つけるのが難しいのです。
 しかも、ルソン島での戦況も戦争の前半と後半では大きく違います、開戦当初、日本軍が勝利し、当時ルソン島の司令官だったマッカーサーは命からがら島から逃げ出すのですが、二年後にはそのマッカーサー率いるアメリカ軍が奪還します。
 この島をめぐって激しい争奪戦があったのは、そこが物資補給の生命線であったことに加え、大掛かりな日本本土空爆の足掛かりになるから、つまりはここでの戦況が全体の戦況に大きく影響するから、言い換えれば大東亜戦争の縮図なのです、少なくとも私はそう考え、ここを重要な舞台に選んだのですが、資料不足には困りました。
 この辺りで大いに参考にさせて頂いたのは『従軍看護婦たちの大東亜戦争』(祥伝社刊・同名編集委員会編集)、中でもかの地で実際に医療に携わられた金沢知子さんと仰る方の手記、ルソン島での幸子は金沢さんの手記を下敷きに書いたものです、九死に一生を得たような幸子の体験はほとんどそのまま金沢さんの実体験です。
 
 大東亜戦争を扱ったものをいくつか書きましたが、私の基本姿勢は『反戦』です、戦争はないに越したことはないのです。
 何かと話題になる日本国憲法第九条、それが盛り込まれた経緯はさて置き、崇高な精神を持つものだと思います、しかし九条と同様な憲法を持つ国は多くありません、日本が戦争を放棄しても戦争は日本を放棄してはくれないのです。
 今でも地球上から戦火が途絶えることはほとんどありません、戦争は決して対岸の火事ではなく、いつわが身に、日本に降りかかって来るかわからないのです、平和、平和とお題目のように唱えるだけで戦争が日本を避けてくれるのであればいくらでも唱えます、ですが残念ながら現実は違います、平和は国家間の力関係の上にかろうじて成り立っているものなのです、もちろんその『力』は軍事力だけではありません、経済力も大きな力であり、外交力も必要です、ですが、軍事力を全否定することもできないと私は考えます。
 
 作中では登場人物がそれぞれ、自分の思いを胸に、それぞれの戦いを戦っています、そこに共通するのは『守る』と言う気持ちです、必ずしも『国を守る』と言うことではありません、家族を守りたい、故郷を守りたい、目の前の患者を守りたい、そして自由を守りたい、そんな気持ちで戦っているのです。
 大事なものを守るには何が必要なのか……それを考えて頂けたらと思います。
 
▽   ▽   ▽   ▽  ▽   ▽   ▽   ▽

 『あとがき』が長くなってしまいました、それは私の筆力不足のせいです、本来なら作中に全部込めて行かなくてはいけないのですが、先に書いたように、大東亜戦争を題材として扱うのは骨の折れることで、どうしてもドラマの総集編のようになってしまいました、連続ドラマを書くだけの筆力と根気がないのです。
 長編を書くたびにそれは痛感することでして、この作品もいつかはもっと詳細に、ドラマチックに書き直してみたいと思いながらの投稿になります。
 その『いつか』がいつになるのか、それ以前に本当にやって来るか、まだわかりませんが。
作品名:星の流れに(第三部・焦土) 作家名:ST