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フリーソウルズ2

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Scene.11
喫煙所

神奈川県敦木市敦木警察署

敷地内駐車場隅のあり簡易な喫煙所
つい立ての板壁に貼り紙がある。
”健康増進法施行のため、この喫煙所を廃止します。
喫煙される方は建物屋上の喫煙スペースをご利用ください”

曽根   「(貼り紙を睨みつつ)愛煙家にはつらいご時世ですね」
佐賀   「肩身が狭いよ」

曽根の隣でマルボロに火をつける佐賀。

佐賀   「増進法かなんか知らんが、この駐車場脇の喫煙所と屋上と、どんな違いがあるんだ?」

わからんと呟きながら煙を宙に吐き出す佐賀。

曽根   「屋上にあがるには、階段を上り下りしないといけません」
佐賀   「やめてくれよぉ」
曽根   「健康が増進するかもですよ、佐賀先輩」
佐賀   「なわけないだろ、曽根」

無駄話をしていると数人の学生服を着た若者たちが警察署の建物から出てくる。
先頭きって出てきたのはポニーテールの美少女然とした女子・七尾ひめ。
ひめは一瞬立ち止まり佐賀に射るような視線を送る。
もう一人は短い金髪の端正な顔立ちの女子・金井カーネル真凛。
あとひとりは小太り中背これといって特徴のない若い男子学生・山本恭一。

佐賀   「どこかで見た顔だな、ポニテの美人」
曽根   「え、先輩は、あの子知らないんですか? 」
佐賀   「見憶えあるんだよな。誰?」
曽根   「"姫君"ですよ。あぁ何だよ、男なんか連れて」
佐賀   「ひめぎみ? 知らないなぁ」
曽根   「地元の女子高生4人組のバンド”姫君”のヴォーカルとベースの娘」
佐賀   「詳しいな、曽根」
曽根   「いや地元ではそこそこ有名。がんばってる子たちですから」
佐賀   「初耳だわ」
曽根   「もう佐賀先輩、そういうのに疎いから。でも何の用事で来たんだろ?」
佐賀   「何か訳アリの顔だったな」

佐賀が建物内に戻りかける。
玄関先で若者たちの背中を見送っている制服警官の大下に出くわす。

佐賀   「大下巡査、何かしでかしたのか、ひめぎみ」
大下   「あ、これは佐賀警部補。お疲れ様です。よくご存じですね、彼女たち」
佐賀   「今、曽根から聞いた」
大下   「そうでしたか、いえ、警部補の手を煩わすような案件では」
佐賀   「そんなのいいから。何だったの?」
大下   「家出です」
佐賀   「家出か・・・。じゃ、いいわ」

興味を無くして話を打ち切る佐賀。

大下   「(被せ気味に)それが・・・(匂わす)」
佐賀   「家出なんだろ」
大下   「それが・・・」
佐賀   「なんだよ」
大下   「ひめ、いやあの女子が言うには、少年が拉致されていると・・・」
佐賀   「事件じゃん、それ」
大下   「三浦半島にいたとか、白根山男体山金精峠を中心にした三角地帯を徹底的に捜せとか」
佐賀   「真に迫ってるな。何か知ってるのか?」
大下   「そう思って、話を聞いたんですが、具体的な場所とか肝心なところになると言葉を濁して、要を得ないんです。どうせ・・・」

言ったところで言葉を飲みこむ大下。

佐賀   「なんだ大下、どうせ高校生が暇つぶしに名探偵コナンごっこしてるとでも言いたいのか」
大下   「や、とんでもありません。私は・・・」
佐賀   「冗談だ。ところで・・・」
大下   「はい」
佐賀   「捜索願は?」
大下   「出てます」
佐賀   「いつ?」
大下   「あ、ええと・・・」

先ほどすれ違った美少女の訳ありげな視線を思いだす佐賀。

佐賀   「ファイル見せて」
大下   「あ、これですか。これは、あの・・・」

躊躇する大下からファイルを取り上げる佐賀。

佐賀   「10日前か。実の姉だな、願い出たのは」

ファイルの2枚目に印刷されている少年の顔写真を見る佐賀。
その顔に見覚えがある佐賀。

佐賀   「大下、2か月ほど前だが、駅前であった多重事故、覚えてるか」

言いながら顔写真の下に記されている少年の詳細を目で追う佐
賀。

大下   「もちろんです。バイクや市バスを巻きこんで大混乱したアレでしょ。報告書あげるのに何度書き直したことか」
佐賀   「あの事故の最中にさ、植え込みに倒れてる高校生くらいの少年を見つけたんだ」

大下を廊下の壁際に寄せて声を潜める佐賀。

佐賀   「その少年、怪我をしてたから救急隊員を呼びに行ったんだ。で、戻ってみたらもういなかった。そいつの怯えた表情、血走った目。ただ事故を目撃してパニック状態になったのとは違う、何か違和感があった。その違和感が何だったのか・・・」
大下   「もしかしてその少年が・・・」
佐賀   「この子だ」

2枚目の顔写真を表にしてファイルを大下に返す佐賀。

佐賀   「(呟く)椿谷裕司か・・・。(大下に)見つかったら教えてくれ」


作品名:フリーソウルズ2 作家名:JAY-TA