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フリーソウルズ2

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Scene.62
裕司ステージ

灌北アリーナ

裕司   「きょう、僕は・・・」

裕司が話し始めたとき突然舞台下から怒号が飛んでくる。

カツ   「お前の話なんか聞きたくねえわ! 早く姫君を出せ!」

遊び仲間のトンボとともにヤジを飛ばすカツ。

カツ   「ひっこめ、裕司!」
トンボ  「姫君を出せ!」

カツが裕司にツバを吐きかけようとしたが届かない。
怒りに任せてカツが手に持っていたビール缶を裕司に向かって投げつけようとする。
ステージ上の裕司が頭を抱えてうずくまる。
両手で耳を押さえ何かに耐えるようにぎゅっと目を閉じる裕司。
振りかぶったカツの腕が停まる。
カツの頭上で静止したビール缶。
その口からカツの頭髪に白い泡と黄金色の液体が流れ落ちる。
カツの顔にも滴ってくる。
目の端で横にいるトンボを睨むカツ。

カツ   「何してくれてるんだよ、トンボ」
トンボ  「(驚いて)俺は何も・・・。カツさんが自分で・・・(大仰に否定する)」
カツ   「うるせぇ!」

空いたほうの腕でトンボを殴りつけようとするカツ。
カツの拳を手のひらで受けるトンボ。
返す刀でカツの顎に強烈なパンチを喰らわすトンボ。
目を回してぶっ倒れるカツ。

トンボ  「カツさん!」
呼びかけながら自分の両手を見て不思議がるトンボ。
この騒動を見ていた学園祭実行委員会が動きだす。
スタッフ総動員でカツを運びだしトンボを会場から連れだす。
そっと目を開く裕司。
しゃがんだままマイクを握ってぽつぽつと語り始める裕司。

裕司   「頭の中で声が聞こえるんです。おかしいでしょ。でも本当なんです。ワレハワレノミデハナイ。ワレワレガテヲトリアウトキ、ソレハシンパンノトキデアル。呪文のように、念仏のように繰り返し、聞こえてくるんです。ユアトさんに尋ねました。そしたらそれは、ジュノックがアテンに呼びかけている声だと。ゼーレの結集を呼びかけているのだと。ユーチューブ動画見て、ユアトさんの話聞いて、何とか理解しようとしましたが、全然理解できなくて・・・。ゼーレとかチェザルモとか自分事じゃない」

立ちあがって話を続ける裕司。

裕司   「ただひとつ、わかったことがあります。きょう、僕は大事な友だちを亡くしました。夜の街でチンピラに、何も悪いことしてないのに、何の前触れもなく殺されたのです。あんないい奴が17歳で死んでいいわけがない!なんでみんないがみ合う?なんでみんな殺し合う?手を取り合うべきなのは僕たちのほうじゃないのか?!ひどい世界に生きている。誰も気づいていない」

ステージ上に超科研の4人と姫君4人が表れる。
裕司に向いて正座し両手をつく真凛。
裕司はマイクを床に置いて呟く。

裕司   「もう、うんざりだ・・・」

その瞬間、建物が小刻みに揺れ地鳴りがする。
天窓にひびが入りガラス片とともに黒い鳥が会場の中に落下してくる。
フロアの観客たちは気味悪がって逃げ惑う。
ステージからその観客たちのいるフロアへおりる裕司。
観客たちは裕司のために道を開ける。
その道はガラス片が散らばる空間に続いている。
人垣が環状に広がった空間の真ん中で血まみれのカラスが死んでいる。
死んだカラスの横に立ち天窓を見あげる裕司。
四角い窓の向こうに眩しいほどの真っ青な空が広がっている。


作品名:フリーソウルズ2 作家名:JAY-TA