フリーソウルズ2
Scene.50
曽根ユアト
敦木署内の廊下
佐賀 「大下、例の椿谷って少年、見つかったか?」
大下 「いや、佐賀さん。それどころじゃないっす」
佐賀 「イノシシの件か? もう下っ端に出番はないだろ」
大下 「それが未だに、目撃情報のたんびに出動で・・・」
佐賀 「大変だな。頑張れよ」
大下 「ありがとうございます。あ、椿谷裕司はまだ見つかっていません」
佐賀 「そうか」
大下 「見つかったら、連絡しますので」
佐賀 「おぅ、サンキュー」
大下を軽く労って署の階段のぼる佐賀。
警察署の屋上の扉を開ける佐賀。
喫煙スペースでひとり喫煙している曽根。
佐賀 「ここだと思った、曽根」
曽根 「僕を探してました、佐賀先輩?」
佐賀 「うん、ちょっと」
曽根 「なんですか?」
佐賀 「曽根、お前ユアトって名前聞いたことあるか?」
曽根 「ユアト? ユアト、ユアト・・・」
佐賀 「若い連中に訊いても知らないって」
中空を見あげて手のひらに文字を書く曽根。
佐賀 「なっ?」
曽根 「あ、あります、先輩。すっごいイケメンだとかいって、彼女が見せてくれました」
佐賀 「ユーチューブ動画か」
曽根 「はい。ちょっと見ただけですけど、たいしたイケメンじゃなかった」
佐賀 「そこじゃなくて、そいつ駅前の多重事故の映像使って、なんかコメントしてるんだよ」
曽根 「あのヘンテコな追突事故ですか?」
佐賀 「見たか?」
曽根 「イケメン動画にありましたか?」
佐賀 「あったよ! ちゃんと見ろ!」
曽根 「すみません(肩をすぼめる)」
佐賀 「まあ、いい」
咥えたタバコに使い捨てライターで火をつける佐賀。
佐賀 「あれ、ニュース映像や警察が公表した写真以外にも、一般市民には入手困難な防犯カメラ映像も含まれていた。そこまでしてユアトは何を主張したかったのか。
それに、あのユアト動画には気になる少年も映っていた」
曽根 「家出した高校生ですか?」
佐賀 「ああ。まだ見つかってないらしい」
曽根 「あの動画ちょっと見、胡散臭い内容でしたよ」
佐賀 「ああ。ただその少年と多重事故に関係性があるようなユアトの口ぶりだったのが・・・」
曽根 「あれはベンツのわき見が主因でしょ。それが連鎖的な追突事故を招いたという事故報告を読みました」
佐賀 「たった1台の不注意であそこまで大きくなるか? 現場にブレーキ痕がほとんど残っていなかった」
曽根 「だからヘンテコな事故」
佐賀 「今回のイノシシ暴走事件にユアトが絡んでいるというSNSを見た」
曽根 「えぇぇ? ユアトが黒幕?(冗談めかして驚いて見せる)」
佐賀 「よくわからんがな。あいつをしょっ引いて話を訊いてやろうかと」
曽根 「しょっ引くのは無理でしょ。事故動画をアップしたくらいで」
佐賀 「叩けば何か出てくるだろう」
曽根 「佐賀先輩、今敦木署大変なんすよ。ヘタ打てば逆にこっちが叩かれる」
佐賀 「チッ」
舌打ちしてタバコを揉み消しす佐賀。