フリーソウルズ2
Scene.27
ゼーレ動画閲覧
灌北大学超科研部室
一か所に固まってノートPCに映るYouTube動画を見つめる超科研部員4人。
リョウ 「これ、いつアップされた動画?」
レン 「1日前とある。昨日かな」
ゆっちん 「ユアトって誰だ?」
レン 「ユーチューバーでしょ」
ゆっちん 「それはわかってるけど・・・」
カモ 「風体はチャラいが、説得力はあるな」
リョウ 「胡散臭い気もする」
カモ 「にしても、なぜ、こいつが今、ゼーレを取りあげたか」
レン 「たまたま時期が合致しただけ?」
ゆっちん 「うん、偶然の一致でしょ」
超科研2年生の3人はユアトが発信した動画を目に前にして他人事である。
カモ 「ばか、偶然の一致で済むか! 俺たちから漏れたんだ」
リョウ 「や、それはないでしょ」
カモ 「なぜ言い切れる? 誰が今、ゼーレやアシュロフを話題にするやつがいるんだ?!」
リョウ 「いないとも言えないでしょ、カモさん」
カモ 「まず、多香子さんに謝らないと」
ゆっちん 「待ってよ、部長。僕らが知らなかっただけで、ゼーレやアシュロフはその界隈では有名やったかもしれへんで」
レン 「うん、俺たちの目に触れなかっただけで」
リョウ 「多香子さんが来たとき、なんかすっごい秘密な情報みたいに思ってたけど、実はそうでもなかったとか・・・」
ゆっちん 「多香子さんの考えすぎ」
レン 「誇大妄想っていうか」
カモ 「おいおい、お兄さんは実際に亡くなってるんだぞ」
ゆっちん 「だから、ただの交通事故かもしれんやん・・・」
カモ 「(一瞬返事に窮するが)警察は信用できないって、ゆっちん言ってなかったか?」
ゆっちん 「時と場合による・・・(苦笑い)」
呆れ顔のカモ。
リョウ 「ねぁ、カモさん。こうやってユーチューブでネタにしてる奴がいるんですから、ゼーレは公然の秘密とかではありませんよ」
カモ 「そうだな、たしかに」
ゆっちん 「取りあげ方がちょっとチャラけているし」
レン 「信じるか信じないかは、あなた次第、みたいな」
カモ 「逆に穿った見方すると、あの事故に関する多香子さんの疑念を打ち消すために作った番組かも」
リョウ 「部長、穿ちすぎ・・・」
レン 「お金かけすぎ」
カモ 「それな。一般人が作る動画のレベルじゃない。金も時間も人手もかかっている」
ゆっちん 「それに、ユアト、顔出ししてイケメンだし、喋りもうまい」
リョウ 「細身で髪ふさふさだし」
ゆっちん 「腹立つわぁ、そこ」
リョウ 「えっ? ゆっちん、妬んでる?」
ゆっちん 「妬んでへんわ! みるきぃはチャラい男は嫌いや言うてたし。男は顔やないて」
リョウ 「ファンサな」
ゆっちん 「うるさいわ!」
カモ 「(神妙な顔で)問題は・・・」
レン 「問題は?」
カモ 「ユアトが、佐伯先輩の実験のことを知っているのか、知らないのか・・・」
レン 「そういえばこの動画では、佐伯先輩の名前は出てこなかった」
リョウ 「天根教授の名前もな」
レン 「実験のことを知らないとすれば・・・」
カモ 「俺たちから漏れた可能性は限りなくゼロに近い」
リョウ 「知ってるとしたら、厄介なことになる・・・」
ゆっちん 「ユアト、また新しい動画アップしてくるんやろか?」
YouTube動画を見ながら長い溜息をつく超科研部員4人。
リョウ 「(ふと顔をあげて)どうする、カモさん?」
ゆっちん 「どうする、って?」
リョウ 「これは、ユアトって野郎から俺たち超科研への挑戦状かもしれない」
ゆっちん 「何言うてんねん、挑戦状て・・・」
カモ 「そうだな。ユアトくらい時間と金がある奴なら、俺たちのことも多香子さんのことも調べあげてるかもしれん」
リョウ 「もし佐伯先輩の事故が単なる事故じゃないとしたら・・・」
レン 「多香子さんの身に危険が及ぶ・・・」
ゆっちん 「みんな、考えすぎやて」
カモ 「ゆっちん、よく考えろ。俺たちが、大事な情報を世間にばら撒いたのかもしれない。もし、そのせいで多香子さんに何かあったら、お前どう責任をとるんだ?」
身を縮めて黙りむゆっちん。
カモ 「みんな、動くぞ!」
リョウ 「何をする?」
カモ 「ゼーレとチェザルモの真実を確かめる」
リョウ 「できるのか?」
カモ 「やるしかない。まずは・・・」
レン 「ユアトか」
ゆっちん 「ユアトは手強そうやで・・・」
リョウ 「うん、奴は一筋縄ではいかなさそう」
ゆっちん 「しゃあないなぁ。ユアトは僕が尻尾を掴んだる」
カモ 「とりあえず一番手がかりとなるのは・・・」
カモたち 「(4人が口を揃えて)橋本正次郎!」