フリーソウルズ2
ヒロト 「お母さん、どうしたの? どうして泣いてるの?」
画面が水森家の仏間に切り替わる。
妙子がヒロトの手を引いて入ってくる。
金紙や緞子で飾られた立派な仏壇に水森コウキの遺影が立てかけてある。
仏壇の前で膝をついてヒロトに正対する妙子。
優しくヒロトに語りかける妙子。
妙子 「覚えてる? お父さんとお母さんと3人で桜川に遊びに行ったこと」
ヒロト 「うん(頷く)」
妙子 「ボールが川に入ってあなたが取りに行ったよね。浅瀬にあったボールがどんどん流されて、それを追っていくうちに、あなたも・・・」
ヒロト 「僕、うまく泳げなかった・・・」
妙子 「たくさん水を飲んだでしょ。苦しかったでしょ」
ヒロト 「苦しかった」
妙子 「ごめんね」
ヒロト 「えっ?」
妙子 「コウキは川で溺れて死んじゃったの」
ヒロト 「お母さん、変なこと言わないでよ。僕はここにいるよ」
妙子 「私のコウキはあそこにいる(仏壇を指さす)」
仏壇の須弥壇の上に無邪気にほほ笑むコウキの遺影がある。
遺影の写真をまじまじ見つめるヒロト。
ヒロト 「この写真,イケてない。もっといい写真撮ろう、お母さん」
妙子の手を取り引っ張っるヒロト。
ヒロトの手を掴み返す妙子。
妙子 「あなたは水森コウキじゃない!」
ヒロト 「えっ」
全身がフリーズするヒロト。
妙子 「あなたは、ヒロトくん」
ヒロト 「えっ、なんで?」
妙子 「あなたは、黒田ヒロトくんだよね。ほら、あそこにヒロトくんのお母さんがいる」
隣室に潜むように佇む佳穂を指さす妙子。
目頭をハンカチで押さえている佳穂。
ヒロト 「違う。なんで、なんでお母さんまでそんなこというの」
涙目で妙子を睨むヒロト。
妙子 「聞いて、ヒロトくん」
ヒロト 「ぼくはヒロトじゃない」
妙子 「お願い・・・」
ヒロト 「やだ、やだ。ぼくは・・・ぼくは・・・」
妙子にすがりつくヒロト。
ヒロト 「やだ、やだ!お母さん!ねぇお母さん」
妙子 「(ヒロトの顔を見つめ)私のコウキはもうこの世にはいないの。わかって、ヒロトくん」
ヒロト 「やだ、やだ!お母さん!お母さん!」
泣きじゃくりながら妙子の腕にしがみつくヒロト。
ヒロト 「お母さん、お母さん」
妙子の腕の中で泣きやまないるヒロト。
ヒロトを優しくそして強く抱きしめる妙子。
妙子 「ごめんね、コウキ。あなたを助けてあげられなくて・・・ごめんね・・・」
妙子の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。