フリーソウルズ2
Scene.18
裕司回想
敦木町駅前の交差点を歩いていた裕司。
その横断歩道に、シルバーのベンツが速い速度で突っ込んでくる。
運転者は前を見ずに、隣の女性に話しかけている。
横断歩道の真ん中で一瞬足がすくむ裕司。
裕司のすぐ脇を、子どもを乗せた自転車が通りすぎる。
次の瞬間、金属の衝撃音とともに自転車と母子が宙に舞う。
自転車のハンドルが裕司の肩に当たる。
その反動で、車道端の植え込みに弾きとばされる裕司。
自転車を撥ねたベンツは十字路で右折待ちしていた大型バイクをかする。
ベンツは交差点に進入してきた路線バスと側面衝突する。
大型バイクは反対車線にハンドルを切る。
走ってきたタクシーの下敷きになるバイク。
急停車したタクシーに、後続のトラックが追突する。
荷台の古紙が交差点に散乱する。
路線バスに衝突したベンツはスピンして交差点に面した花屋の店先で停車する。
ボンネットから白煙をあげるベンツ。
タクシーの下部から液体が漏れだす。
バイクの計器類の配線コードが火花を散らす。。
悲鳴と怒号が敦木町駅前交差点に渦巻く。
植え込みに倒れたまま、戦慄に身が震わせる裕司。
ベンツの運転席から見た母子が宙に舞う光景。
地面をスライディングして、タクシーの車体にぶつかる衝撃。
ベンツを弾きとばす路線バスの運転者の視線。
倒れたバイクを下敷きにしたタクシーに、後方からトラックが迫り衝突する瞬間。
それぞれの運転者の視点が、いっきに裕司の海馬に流れこむ。
バイクのケーブルの火花が、揮発するガソリンに触れる。
瞬く間に炎が燃え広がる。
無数のかけらが飛散する爆風と轟音。
ハッと目を開く裕司。
裕司の顔から手から全身から汗が吹き出している。
あたりを見廻す。
スチール製の屋根と壁。
胸のあたりに温かいものを感じる。
ジローが心配そうな目をして裕司にぴったり寄り添っている。
ごくりと唾を飲みこみジローの頭を撫でる裕司。
裕司 「怖い夢を見た。大丈夫、心配ない」