フリーソウルズ2
Scene.17
山下公園
横浜中華街駅の階段を駆けあがる真凛と恭一。
中華街を背にする。
横浜港に面した山下公園に向かう真凛と恭一。
恭一 「(真凛に手を引かれて嬉しそうに)ベタなデートコースですか、真凛さん」
真凛 「うるせぇ、キョーイチ。黙ってついてこい!」
風に乗ってエレキギター音が聴こえてくる。
公園内の芝生広場が若者たちで賑わっている。
ステージ脇に積まれた大きなスピーカーから大音量で音楽が流れている。
真凛 「間に合った(歩みをとめる)」
恭一 「ライブっすか? 誰っすか?」
真凛 「クレイジーケンバンド。俺は横山剣さんをクールスの時代から知っている。クールスは俺の青春だった」
恭一 「俺の青春だったって、真凛さんまだ17歳でしょ」
真凛 「それがな、キョーイチ」
事情を告げようとしたが、”ま、ええわ”と呑みこむ真凛。
公園広場を取り囲む角々に幟旗を立てたテントが設置されている。
ドリンクを提供する店や軽食を売る屋台などがある。
ステージ前に急ぐ真凛。
来場客が行列を作る繁盛店に行く手を阻まれる真凛たち。
恭一 「あ、真凛さん、ここ有名なタピオカのお店(看板を指さす)」
真凛 「お前、JKか(ツッコむ)」
視界の隅に長い髪をアップにした女性の姿が留まる真凛。
買ったばかりのタピオカティーの入ったプラスティック容器を手に、店の前から立
ち去ろうとする女性。
その女性に釘付けになる真凛。
ある女性の記憶が蘇り固まる真凛。
真凛 「(無意識に)しょ、お、こ・・・(と呟く)」
真凛目の前を女性が通り過ぎる。
真凛 「しょうこ!!!(女性に叫ぶ)」
女性の隣にいた若い男が真凛の声に反応する。
髪をレンガ色の染めゴールドのアクセサリーをつけた若い男が真凛を睨みつける。
真凛の袖を引く恭一。
恭一 「真凛さん、人違いです」
真凛 「いや、しょうこだ!」
なおもその女性に接近しようとする真凛。
恭一 「真凛さん!!(一喝する)」
クレイジーケンバンドの楽曲タイガー&ドラゴンのさびが公園内に響く。
恭一 「真凛さん、彼女は・・・」
女性と連れの若い男は振り向きもせずその場をあとにする。
ふたりが見えなくなるのを待つ恭一。
恭一 「彼女は、うちの高校の女子で・・・」
真凛 「違う、彼女は・・・」
混乱した目をしている真凛。
真凛を人影まばらな広場の外れまで連れて行く恭一。
恭一 「彼女は、いっこ上の先輩で、名前は・・・」
真凛 「なんでわかる?」
恭一 「同じ陸上部だったんです」
真凛 「しょうこじゃない?」
恭一 「誰です、しょうこって?」
真凛 「・・・」
恭一 「彼女は童門香織、第一農高3年生18歳」
真凛 「見間違えてないか?」
恭一 「目の前を通ったんですよ。至近距離で見たから間違いありません」
真凛 「童門香織?」
恭一 「結構美人なんで、学校では皆知ってます」
真凛 「そうだろうな」
恭一 「その割に誰とも付き合ってないらしくて・・・」
真凛 「キョーイチの学校へ行けば彼女に会えるのか?」
恭一 「いやぁ、それが・・・」
真凛から目をそらせて頭を掻く恭一。
恭一 「夏の大会で陸上部引退して・・・」
真凛 「部活辞めても学校来るだろ」
恭一 「噂ですけど、引退後は誰も彼女を見た奴いないみたいで・・・学校では」
真凛 「学校に行かなくても余裕で卒業できるからか?」
恭一 「いや、そんな感じでもなくて・・・さっき見たような男と遊んでるらしくて・・・」
真凛 「しょうこはそんな女じゃない!」
恭一 「だ、か、らぁ、真凛さん」
真凛 「あ、童門香織か、今は・・・」