小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

架空植物園2

INDEX|4ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 


彼女が実に顔を近づけている。
「ここを小動物や人間が通ると、この種がくっついて運ばれるんですよ」
私は1個引き抜いてズボンに付けてみせた。
「ああ、なるほど」
「この横を向いている状態で初春の風が強い日に揺れて戻ったりしているうちに、タイミングが合うとこんな風に2つがくっついてしまうんです」
「なるほど、それで接吻草ね」
「今がちょうど見られる時期です。そのうち種の付け根が緩くなってきて抜け落ちてしまいます」
「あ、そうですか」

彼女がカメラを構えた。コンパクトデジカメでマクロ撮影ができるのだろう、かなり近くまで寄って撮っている。
「どこかに発表してるんですか」
唐突に私が訊いたものだから、彼女は予期しないシャッターを押したのだろうか、アッと小さい声がした。
「ああ、ネットの文芸サイトに。写真に詩をつけてです」

私は驚いて心拍数が速くなるが感じられた。自分も文芸サイトに小説を投稿しているからだ。
「ノベリストですか」
私の声が高くなっているのに驚いたように、彼女の身体がびくっと動いた。また彼女のカメラからシャッター音がした。
彼女が何か言おうとしてためらっている。私は「私も小説の投稿してるんです」と続けた。
「えーっ そ、ノベリストで」
「私は主に短い小説ですけど」
「ペンネームは?」
「デーオです 名前がヒデオだから」
「そうですか、詩しか見てないから、今度見てみますね」
「わたしはカゼウタイです」
「風唄いですか、いいペンネームだなあ。じゃあ。私もあまり読まない詩を読んでみよう」

私は身体の中から幸せがあふれてくるような感覚になっていて、本当はもっと一緒にいて話を続けたかったのに、急に照れくさくなってしまっていた。彼女はまた接吻草に接吻するようにレンズを近づけている。

「じゃあ、ノベリストで会いましょう」
私は、彼女の唇に視線を向けた。その小さい口をすぼめてピント合わせをしている姿を目に焼き付けた。きっと今夜いい夢がみられるかもしれない。軽くなった足取りで観察園の出口に向かった。




作品名:架空植物園2 作家名:伊達梁川