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架空植物園2

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どうやら同じものを撮りにきたのではないだろう。偶然見つけてしまった様な雰囲気で、私が近付いてゆくと何かを尋ねたいような顔をしたのだ。
「こんにちは」
挨拶をしてそれに近付いた。一坪ほどの面積にその実がいくつもあった。
「ああ、ついてますね」
実と実が着いているとラッキーという意味のついているになっていることに笑みを覚える。すぐに写真を撮り始めた。
「これは何でしょうか」
若い女性がおそるおそる訊いてきた。私は彼女を見、それから写真を撮る位置を探しながら答えた。
「せっぷんそうです」
「え、節分草ならさっき」
「あ、セツブンソウありましたね。あっちにあった白い花がセツブンソウ、そしてこれはセップンソウです」
「えーっ せっぷんって、あの・・・キスのことですか」
少し疑り深い表情でそう言ったので、さらに彼女の顔を見た。太めの黒縁の眼鏡をかけた小さな顔の美人というよりかわいいという印象だった。年齢不詳と私の頭の中で付け足す。バレンタインデーに一人カメラ持参で自然観察園、ということは男がいないということだろうなと私は、自分のことを棚にあげて同情をしている。

「そうです。珍しいでしょう」
「確かにキスしていますね。でもしてないのもある」
「この花は夏から秋にかけて小さなヒマワリのような花を咲かすんですよ」
「かなり小さいヒマワリですね」
「そう、色も濁った黄色という感じでわざわざ見にくる人もいない。でも実がこんな形、鉤状でしょ」
「カギですか」
「小さい一つがです。それが集まってこんな風に、あ、マジックテープってありますね。あれに近い状態かな」

作品名:架空植物園2 作家名:伊達梁川