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架空植物園2

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このアパートにはロフトがあるが、ものをロフトに運び入れるのも大変だし、はしごの上り下りも面倒なので使っていなかった。
夏になって近所の花火大会の音に誘われて玄関の戸を開けて音のする方を見たが、建物のせいで見えない。あ、方角がロフトの窓側だと思いついた。ロフトへのはしごは邪魔なのでぶら下げたままにして、はしごの間に絵を飾ってあったが、それを取り外し、ロフトに登る状態にセットした。疲れるということはないが、普段していないことなので滑り落ちることがないように慎重に登った。狭い、低い。ずっとしゃがんだままで移動して窓に近寄った。ハンドルがある。ふーん、こんな風になっていたのかと思いながらハンドルを回してみた。ガラスの板が動く。ブラインドと同じ仕組みだ。曇りガラスだが、ガラスを平面状態にすると、向かい側の家の向こうも見える。花火も見えた。しばらく(覗き)状態で見ていたが、飽きてきたので、気まぐれに寝転んで見た。

入った時は分からなかったが、背中にかすかに盛り上がりが感じられた。起き上がって手のひらで確認したら、絨毯の下に何か入っているか、湿気防止か何かの構造的なものかもしれない。でも、気になったので隅からめくってみた。
ノートだ。誰が(前の住人かその前の住人か)入れたか? いや隠したといったほうが正確だろう。ではなぜこの部屋を去るときに、あるいは夜逃げをする時に持って行かなかったのだろうか。かなり慌ただしく去って行ったせいか。それに心のどこかでこのノートを誰かに読んでもらいたいという気持ちもあったのではないだろうか。


作品名:架空植物園2 作家名:伊達梁川