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架空植物園2

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あのドラゴンはどうしただろうか。辺りを見回して緑の多い場所を探した。手前に見える岩場を過ぎた上方にひとかたまりの緑色の藪のような物が見えた。少しずつ岩が多くなってきている。傾斜も出てきて、ずっと上方に行けば、もしかしたらここに入り込んだ穴に到達するかもしれない。そう思うと嬉しいような名残惜しいような気もしてきた。

元は川だったのかもしれない、あるいは乾期で干上がっているかという場所に着いた。砂の上を高台に向かって歩くと、次第に砂から小石、そして岩となった。大きな岩をよじ登って乱れた息を整えながら目の前の風景を見た。規模は小さいが火口湖の形状で中程には水があるのだろう、緑の植物が見える。あ、亀龍草と名付けた草だ。亀のように動いてはいないのは寝ているのだろうか。最初にあったあのドラゴンもいるかなと、懐かしい友に会いに行くような気持ちで近付いていった。

あっ! 足元がおろそかになっていた。何かを踏んだ感触と同時に足が急に上がらなくなって前のめりに転んだ。依然として左足が何かに捕らえられている。両腕で身体を起こし、捕らえられた足を靴から脱いで解放した。足首をひねったようで痛いが、自由に動くし、歩行には問題なさそうだった。改めて靴を捕らえている物の正体を見る。ゴキブリを捕るための粘着性物を塗ったシート状のものがあったが、似たようなものだった。何を捕らえようとしたのだろう。もし、蜘蛛の巣のような役目なら、信号送られるか振動でどこかから獲物を食べにやってくるかもしれない。私は急いで辺りを見回したが、何かがやってくる気配はない。ちょっと鳥肌がたっている。

靴を取り戻さなくてはならない。靴を掴んでもぎ取ろうとしたが、剥がれない。粘着力を削ぐために、砂を掛けてみる。靴の下以外は有効であったが、水ならともかく砂なので靴の下に染みこんでいくことは無い。近くにあった平たく小さな石を靴底に差し込み、さらに大きめの石を差し込みながらどうにか靴を取り戻すことに成功した。ちょっとしたサバイバルゲームのようで楽しさも感じる。でも、地上が暗くなる前に出たい。

靴を取り戻した跡は中央に小さい穴があって、中にどろっとした液体が見えた。食虫植物だったのだろう。捕まえた昆虫を溶かして流し込むシステムかもしれない。

亀龍草は水たまりで水分あるいは栄養分を吸収しているのだろう。私が近付くとかすかに動きを見せたが最初に出会った亀龍草とは違う気がする。というより特定するのは難しい。私は道のように見える傾斜を上り始めた。


作品名:架空植物園2 作家名:伊達梁川