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架空植物園2

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何かが目の前を飛んで行った。トンボのようでもあったが、重そうな飛び方なので目で追える。それは街路灯の木にセミのようにへばりつくと、すぐに鳴き出した。パトカーのサイレンを低音にしたような鳴き方だったが、どこか気取った感じもして可笑しかった。横に付いている羽根をたたんでいないので、トンボかな、でも鳴くしセミかなと名前を何とつけるか迷ったが、セミトンボと命名した。ここは楽しそうだ。私は好奇心のままに歩いた。

鍾乳洞のような地下の空洞と思っていたのだが、最初に思った以上にここは広そうだった。道というものは無いので、足元に気をつけながら歩く。泥沼に近寄らなければ安全のようだ。そういえば芝生のように踏みつけている地面の草も、ありふれたものでは無いかも知れない。そう思った私は屈んで観察した。葉の幅が違う2種類のシバかなと思ってよく見ると、私が踏みつけた所が縦に割れて葉の数が多く細く見えることがわかった。踏まれたダメージは無さそうだった。その結果の利点はなんだろうと考えてみたが、わからなかった。私はこの草に割れ芝(ワレシバ)と命名した。踏まれて数を増やし、そこから根が出て増殖する植物もあった筈だ。これもそうなのだろう。

屈んだせいかどこからかいい匂いがしてきた。醤油の焼けたような匂い。あ、この匂いは何かに似てる。屈んだまま匂いの元を探す。傾斜の少し下のほうにそれはあった。前の経験から不注意に近付いて底なし沼にはまらないように、慎重に足場を確認して近付く。細い川があってきれいな水が流れていた。その手前にガマの穂のように直立した茎の草があって、その先に串団子のような形に実がなっていた。匂いに誘われたのだろう小さな虫がへばりついて、養分を吸っているのだろう、動きが無い。私は虫のついていないものを選んでそれをもぎ取った。串団子から横に引っ張って取ったように、一部が裂けてしまったが、その感触までもが団子に似ていた。虫が付いている実は毒ではないだろうと思ってそれを少し舐めてみた。刺激があれば吐き出すつもりだったが、かすかに甘みが感じられ、噛んでみるとみたらし団子のような味がした。でも、何があるかわからないのですぐに吐き出した。もし、ここから出ることが出来なかった場合はこれを食糧にしようと思った。この命名は簡単だ。団子草(ダンゴグサ)と命名する。また写真を撮りたくなって、携帯で撮れるじゃないかと思ってやってみたが、同じように動作不良だった。電子機器はここでは使えないのだろう。

写真は撮れないがここは面白い。私は(はたして地上に戻れるのだろうか)という不安を抑えて探索を続ける。川は音も無く流れている。でも、川よりも興味のある植物の多い場所に向かった。


作品名:架空植物園2 作家名:伊達梁川