優秀な世界にて
上陸を果たした多国籍軍は、首都を目指し進軍していきます。とても大規模な軍勢なので、道中で渋滞が発生するほどでした。
その国の軍隊は、進軍を阻むべく、再び準備を整えます。今回もまた、ハイテク兵器や優秀な兵士たちが揃っていました。ただ、開発されたばかりの兵器が多く、どれも使い方が高度で複雑でした。そのため、十分理解する前に、その兵器を任された兵士も少なからずいました。なにせ、「わからない」なんて言えば最後、「劣った人々」扱いされるかもしれませんので……。
その一方で、多国籍軍の兵器は対照的でした。ハイテクではないものの、脳筋の兵士でも使えるほどシンプルです。そのおかげで、どの兵士にも同じぐらいの戦力がありました。
この兵器による差は、多国籍軍の平凡な兵士と、その国の優秀な兵士との能力差を埋めるしかなくなりました。確かに、その能力差は大きなものです。
しかし、数の暴力は強烈です。優秀な兵士は必死に戦い続けましたが、やがて疲労にやつれていき、銃弾に止めを差されたのです。
多国籍軍は、敵の死体やその地に、足跡や旗を残しながら、進軍を続けます。無惨に残された死体は、ハエやらカラスやらが、ご馳走として丁重に扱いました……。
各地でそんな一幕が、繰り返し繰り返し上演されたわけです。その国が悲しい結末を迎えることは、もはや避けようの無い現実でした。
敗北を重ねていたわけですが、国の上層部は、人々にウソの情報を流していました。真実を知られれば、「劣った人々」として追放されることは確実な雰囲気でしたから……。
優秀な兵士たちの活躍のおかげで、我が軍は勝利に勝利を重ねているという真っ赤なウソを流すしかなかったわけです……。
多くの人々が真実に気づけたのは、多国籍軍の兵士たちが、我が物顔で首都へやってきた時でした。自分たちが騙されていたことは理解できたものの、もはや唖然と見届けるしかありませんでした……。