優秀な世界にて
敵が不在になると、多国籍軍の群れは、さらに思う存分暴れました。壊し放題のボーナスタイムに突入できたわけです。これ以上無いほど、最高のストレス解消でしょうね。
一方的に攻撃されている側の人々は、持ち前の俊足を活かし、必死に逃げていきました。しかし、それにも限界があります。攻撃に巻き込まれた人の多くは、原型を留めない姿に変身しました。ハロウィンの仮装に近い姿です……。
民間人である人々が、攻撃による犠牲となったわけですが、それに涙する人間は、誰一人いませんでした。なにしろ、彼らの母国では、その国の人々は皆、差別主義者であるという話で満ち足りていましたから……。
かくして、多国籍軍は、この緒戦で勝利を果たせました。群れを構成する兵士たちは、歓喜の声を上げつつ、攻撃跡をスマホで記念撮影しました。その写真は、当然母国のSNSで舞い、勝利の宴に花を添えたわけです。
一方、この敗北を受けた国の上層部は、緊急会議を開きました。軍のメンバーは、将軍や参謀長たちで、テストやノルマで勝ち抜き続けた優秀な人々です。
彼らが一番に考えた事は、避けられない持久戦に、どう対応していくかでした。数や物量で優る多国籍軍が相手のため、持久戦では不利です。そこで、さまざまな解決策が、矢継ぎ早に上がっていきます。
けれども、解決策が上がる度に、必ず誰かが反対論を繰り出し、却下になりました。利権が絡んでいるわけではなく、デメリットがどうしても思いつかれてしまうからです……。どんな小さいデメリットとはいえ、彼らはそれを恐れました。テストやノルマに勝ち続けてきた身なので、酷く強迫的なメンタルになっているわけです……。
会議は長引き、その間に多国籍軍は、大規模な上陸作戦を始めていました。