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優秀な世界にて

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 ――ようやく、国の上層部は、無条件降伏を受け入れました。勇ましく徹底抗戦しようと、降伏して人々から強制安楽死されようと、身の破滅は避けられない状況ですので……。
 それから、多国籍軍の手により、「劣った人々」は解放されました。感動されるべきその光景を、従軍記者は更なる美談に仕上げます。「あと少しで殺されるところだった弱者を救う我が軍兵士」という記事は、母国の人々を感動の嵐に見舞わせました。
 大国側の上層部が、次の選挙結果を楽しみに心待ちしたのは、言うまでもありません。また、参戦していた国々は、その国の利権を獲得すべく、大国の足元へすり寄ります……。
 そして、その敗戦国の「優秀な人々」は、「まな板の上の鯉」に成り果てていました。大国や他の国々は、彼らをどう料理してやろうかと、考えを巡らせます。

 自分たちが「優秀な人々」やその国に、少なからず嫉妬していた事は確かです。とはいえ、それを公式に認めるわけにはいきません。本音とはいえメンツに関わりますからね。
 そこで彼らを、優性思想を崇拝する「劣った人々」とする事に決めました……。シンプルに言えば、「優秀な人々」ではなく「劣った人々」だったという話です。
 そんなわけで、彼らは世界中から、「劣った人々」として扱われるようになりました。世界中の人々が嫉妬し、嫌っていましたので、彼らを擁護する者は現れませんでした。まあ、擁護なんてすれば、自分自身が「劣った人々」だという扱いをされかねません……。


「皆さん、よく見ておくんですよ〜!! 優性主義に染まると、あんな惨めな暮らしをしなくちゃいけないんですからね〜!!」
そこは超大国の動物園で、ちょうど小学校の遠足が行なわれています。引率の先生が子供たちに、広いオリの中にいる「ある動物」の説明をしていました……。
「びんぼうくせ〜〜〜!!」
「くさっ!!」
子供たちは、バカにした表情と口調で、そこにいる「劣った人々」を観察していました……。



【完】
作品名:優秀な世界にて 作家名:やまさん