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優秀な世界にて

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 ――人道的ではなかったものの、優秀な人々のおかげで、その国は財政難の危機を脱することができました。しかも、その勢いは衰えていません。1人当たりのGDPでは、世界の上位を維持できるまでになりました。

 ところが、他の国々は、その国の成功を妬みました。「卑怯な手を使って成功している」という具合に。なんとかして足を引っ張ってやろうと、つけこむ隙を伺っているのでした。
 強制的な安楽死や中絶をやっているので、他国の人々からの評判も最悪なものです。そんな事情から、同盟国や友好国の関係を取り止める国々が続出しました。


 そんなある日。国の首都で厄介な事件が起きてしまいます。その事件は、国の命運を懸ける事態にまで発展しました。
 事件概略はこうです。子供の安楽死を避けるために、大使館へ逃げ込もうとした家族がいました。それを警察が拘束し、子供はそのまま強制安楽死です。ところが、母親が外国人で、ハーフの子供は二重国籍の状態でした。つまり、半分外国人を殺してしまったわけです……。

 待ってましたと言わんばかりに、大国であるその国は、腰巾着の国々とともに、その国を非難の嵐を吹き起こします。人道的な大義名分と選挙対策のためです。以前から非難は何度も受けていたので、その国は従来通り、適当に対応しました。
 しかし、そんな対応が、今回は火に重油を流し込む形にまで燃え上がります……。世界中の偽善深い人々が激怒し、自国に軍を出動させました。あちこちのテレビで、航空母艦や爆撃機の映像が、何度も繰り返し流れます。国旗を掲げた多国籍軍が、その国へ勢いよく雪崩れこんでいきました。「これは正義だ!!」という暑苦しい熱気がたちこめ、その国をすっぽりと包囲します。

 いくら優秀な人々の国とはいえ、大国を始めとする国々で構成された多国籍軍に勝つことは、物量的に難しいのが現実でした。無論、その国の上層部もそれはわかっています。優秀な頭脳の人物ばかりですからね。
 けれども、無条件降伏を受け入れた場合、人々は激怒することでしょう。上層部を「劣った人々」として扱い、強制安楽死へという流れも十分にありえます……。
「数多のテストやノルマを突破してきた我々が、戦争に負けるはずない!! 我々が優秀な人間であることを、奴らに教えてやろう!!」
無駄に高いプライドも作用し、人々は徹底抗戦の構えでした。いくら頭が良くても、理性と柔軟性が無ければバカという典型例ですね。
 こうして、戦争が始まったのでした。少数の天才と大勢の凡人との戦いです。

作品名:優秀な世界にて 作家名:やまさん