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優秀な世界にて

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 この新しい強制安楽死の法律が施行されると、みんな必死に勉強し、運動を行なうようになりました。こんな国でも、ほとんどの子供たちは無駄死にしたくありません。特にテスト前など、子供たちは、狂ったように無我夢中で努力しています。
 ただそれでも、ビリの子供は当然出ます。クラスから毎年1人程度消えるわけですが、子供たちは生き残れた事に安堵し、次のテストに備えることで精一杯でした。クラスメートの死を悲しむ余裕なんてありません……。

 この子供向けテストで現れた効果を、大人にも活かそうという流れに広がり始めました。
 ただし、大人向けの場合には、テストではなくノルマという形で課せられました。国が職場ごとにノルマを決め、それを会社が社員に課すわけです。達成できなかった社員は障害者として扱い、強制安楽死が待っています。
 ノルマを達成さえすれば、誰も死なずに済む話ですから、子供よりは比較的優しい仕組みです。国はそういう風に、うまく説き伏せえてしまいました……。

 みんな必死に働きました。与えられたノルマを達成できなければ死なのですから、早朝出勤や深夜残業をしない人は皆無なほどです。有給休暇の取得など、よっぽど余裕のある人しかできなくなりました。週休0日の人も珍しくありません。風邪や鬱病で一度寝こんでしまえば、もはや死は確定路線です……。
 幸いなことに、こういうノルマは、役所の人間にもきちんと課せられました。たらい回しが激減したのは言うまでもありません。処理した案件数がノルマですからね。訪問客の奪い合いが起きるほどです……。

 ところが今度は、過労死が頻発して、労働人口がまた減少してしまいました。それを補うべく、国は老人をまだまだ働かせることに決めました。もちろん、ノルマは付き物のままです。
 ノルマを達成できなければ死、無理して体を壊せば死という理不尽さ……。それでも老人たちは、必死に働き続けました。


 子供にはテスト、大人にはノルマを課したことによる成果は大きなものでした。支出が減り、税収は増えたのですから、国が喜ぶのは当たり前のことです。
 結果、その国は優秀な人々だけが存在するということになりました。

作品名:優秀な世界にて 作家名:やまさん