優秀な世界にて
この大混乱により、余計な財政出動が勃発してしまいました。なにしろ、事故に遭った健常者が、障害者デビューを果たしてしまう流れが頻発しましたから……。
増えた財政出動分も含めて、これをなんとかしようと、国は思い切った法律を思いつきました。
なんと、十分に働けない障害者を安楽死させるという法律です……。この「十分に」というのは、健常者レベルの仕事ぶりを指します。そのため、発達障害者を始め、障害者全体が、強制的に安楽死させられていくわけです。
酷く非人道的だと、多くの他国から批判されました。しかし、その国は外圧に強い国だったので、そんな批判は無視です。
国民からの批判もありましたが、大多数を占める健常者は聞く耳を持ちませんでした。自分と同じように働かないのはズルいという性悪さもあるんでしょう……。
そして、この強制安楽死の法律は施行されてしまいました。
障害者を次々に安楽死させたため、全体の人口は減少したものの、効率的な社会へ発展していきました。なにせバリアフリーといった配慮が、今は不要になったわけですから。
また、障害が残るような事故を起こさないよう、みんな酷く気をつけるようになりました。
ところが、事故自体が減少したことで、今度は平均寿命が伸びてしまいます。介護費用は増加の一途を辿っています。そこで国は、強制安楽死の対象を、要介護の老人にも広めたのでした……。
それから10年後。高齢者数が減り、出生数がようやく少し増えました。過程は気にすることなく、その結果を人々は喜んだのでした。子供の育成にかかる教育予算が比例して増えたものの、それは当たり前の事です。
しかしながら、今度はその教育予算に、節約の矛先が向けられてしまいます。まるでいじめのターゲットみたいな話ですね……。
対策として、出来の悪い子供を強制安楽死させることに決めました……。知能テストや体力テストを毎年実施し、成績の悪い子供を、障害者だと決めて殺してしまうわけです。安楽死の対象となるのは、1クラス1人程度でした。つまり、クラス1番のバカガキは、永遠に眠り続ける春休みに入るわけです……。