スーパーソウルズ
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どうしたらいいと思う、磯部」
益岡は病室に設置されてあるテレビを見ながら言った。
テレビは連日起こるペットによる異常事態を報道していた。
磯部は壁際に立ち、直立不動で訊き返した。
「この事態を、ですか」
「違う。閣僚会議だ。動物の件で緊急に招集された」
「ご出席なさるべきです」
「厚労省は管轄外だぞ」
「それでも、出席なさるべきです」
「そう思うか、磯部」
「先生は公には全治一か月の大怪我。それを2週間足らずで退院し、政府で唯一当事者となった大臣として、
会議でリーダーシップを発揮なされば、政治家としての株があがること間違いなし」
「うまくいけばな。解決策がないと逆効果だ」
「先生、”彼”を呼んでみてはいかがでしょう」
「誰だ?」
「ユアト」
「あの若造か?」
「騎士団を裏切ったプロフェッサー・ユアサの息子」
「派手にやっているみたいだ。だが彼が来るかな、やすやすと」
「考えがあります」
「何だ?」
「総理のご威光を拝借すればいいかと」
「そうか、その手があったか。首相直々に招待されれば、イヤとは言えまい」
「内閣府に専門家会議を設置します。そのメンバーにユアトを挙げておきます」
「場違いじゃないのか?」
「昨今は、各界から様々なエキスパートが招集されますので」
「で、奴との面談はセットできそうか」
「やってみます。おまかせください」
「面白そうだ。何を考えてるのか、ユアトの腹を探ってやろう」
益岡はパナマ産の葉巻の匂いを嗅いだ。