スーパーソウルズ
という想定で議論が沸騰した。多くの飼い主は、自分の飼い犬は決して凶暴化しないと高をくくっている。
もっとも、飼い主の意図に反して人を死に至らしめた犬は、捕えられたのち保健所で安楽な死が待っている。
「うちのピッピ大丈夫かしら」
帰宅した佐賀の妻が、部屋の隅でうずくまるミニチュアダックスを心細げに見つめた。
「あの子は心配ない。でも念のため夜は俺の部屋で寝かせよう」
グラスにビールを注ぎ、佐賀はそう言ってタバコをくゆらせた。
凶暴化したのは犬だけではなかった。
近所でかわいいと評判だった品川区の小型ワニも豹変した。
散歩中のワニが飼い主の制止を振り切り、よその幼稚園児の足を噛みちぎった。
新聞の朝刊を握りしめて
「いったいどうなっているんだ!」
腹立たしい思いのまま、佐賀は家の玄関から表に出た。
軒先の電柱に、カラスが一羽とまっていた。
佐賀が電柱のてっぺんを見あげると、カラスはグワーッと低く啼いて朝焼けの空に消えていった。