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スーパーソウルズ

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灌北大学に出向く。
超科学メンバーとも会う。
ただしその際に生配信を行いたいから、ギャラリーを1000人集めてほしい。
それがユアトの提案した条件だった。
「うちで1000人入るホールって灌北アリーナしかないよな」
リョウが言った。
超科研のボックスで、カモたち4人はユアトの条件を吟味していた。
ユアトのリクエストに応えられる妙案があるか、額を寄せ合った。
「アリーナは軽音が押さえてるだろう。今年はたしか、ガールズロックバンドで」
カモは学園祭準備委員会のレジュメを繰った。
「ひめぎみ・・・か・・・」
灌北大学は、約1200人を収容できる体育館兼講堂の”灌北アリーナ”と呼ばれる建物を有していた。
「仮にアリーナを使えたとしても、うちら超科研の研究発表で1000人集めるのは無理やで」
ゆっちんがまったりした関西弁で言う。
「ユアトは無理だとわかってて、わざとハードルの高い条件をつけてきたんだ」
「会う気がないのさ」
「俺たちを甘く見てる?」
「ユアトの名前で集められないかな」
レンはスマホで動画アプリを開いた。
「ゼーレ再生回数100万回突破してるし、チャンネル登録者も1万」
「100万回超なんてざらにある」
リョウは渋い顔をした。
「ユアトを知らない人のほうが圧倒的に多い」
「ほんとに興味あるのは、マニアだけ」
「1000人くらい何とかならないかな」
「サッカーやバスケ部は人気あるよ。だけど都市伝説や超常現象に関心ある奴なんて、少数のオタクだけや」
「去年のうちの展示イベントの来場者、たしか50人ちょっと」
「写真の出来が悪すぎた」
話し合いが行き詰まる。
ゆっちんは溜息をつく代わりに、スナック菓子を口に運んだ。
ユアトは面会の条件を突きつけてきた。
1000人のギャラリーを集める。
4人にはその方策が見つからない。
「諦めるか・・・」
リョウが呟く。
ボックスに重い空気が流れる。
レンが、去年の灌北学園祭の動画をスマホで見ていて、閃いた。
「ひとつだけ方法がある」
「1000人集められる方法か?」
「うん」
「まさか・・・」
「無理でしょ・・・」
「まだ何も言ってない」
「・・・」
「軽音の連中にかけあってみて時間をもらう」
「軽音に?」
「時間をもらってどうするよ?」
「たしか、今年は早々に外部チケット完売したと言ってたな」
「あとは学生向けが少し」
「観客が1000人入った状態で時間をもらえれば・・・」
「演者の体を装ってか?」
「だけど、軽音が譲ってくれるかな」
「去年もタイムテーブルに余裕があった」
「軽音に同じ学科の奴がいる。友達じゃないけど・・・」
「ユアトはとくに時間の指定はしてこなかったし,いい案かも」
「軽音部が時間を割いてくれたとして、学園祭実行委員会が認めてくれるか」
「そこだな。委員長はカタブツだし」
「そもそもなんでユーチューバーひとり会うためになんで俺たちこんな苦労しなきゃならないんだ?」
「条件を飲むて言うてしもたやん」
「勢いでな」
「やっぱりできませんでしたって、断るか」
「それも悔しいな」
「カモさん、どうする?」
「みんな、俺たちがユアトに会うのは何のためだ?」
「佐伯先輩の名誉のため」
「ゼーレの真実を確かめるため」
「佐伯先輩の妹さんのため」
「で、みんなどうする?」
カモはリョウ、レン、ゆっちんに決断を求めた。
「やるしかない!」
4人はふたたびハドルを組んだ。

カモ、リョウ、ゆっちんは部室でレンの帰りを待っていた。
軽音と学園祭実行員会の返事を持ち帰るのが、レンの役目だった。
今日中に両者から良い回答がないと、ユアトの件はアウトになる。
3人はやきもきしながらその時を待った。
部室のドアが開き、神妙な面持ちでレンが入ってきた。
レンはニッと笑って
「OKでーす!」
両腕でおおきな円を作った。
「脅かすなよ〜レン」
「聞いて驚くな」
「驚かない」
「姫君がぜひユアトと共演したい、って」
「えええええええええっ!?」
カモ、リョウ、ゆっちんは腰が抜けるほど驚いた。
「姫君、ユアトのこと知ってたのか?」
「共演したいって・・・」
「ちょっと盛った。ぜひ会いたいと・・・」
「たいがいの女子は量子力学とか空間物理とか、絶対興味ないんだけど・・・」
「現実的やもんな、女子は」
「ロックバンドやるくらいだから、ぶっ飛んでるんだよ」
「実行委のほうはなんて?」
「そうそう、得体のしれないユーチューバー」
「何をしでかすか、わからない」
「しかも生配信で」
「得体のほうは、シアトル在住の投資家という情報は入れておいた」
「配信のほうのOKは?」
「リスクあるよな。大学側としては」
「実行委員のひとりが、女子なんだけど、セカンドインパクト2.5を見て泣いたそうだ」
「川で溺れた子どものやつな。俺も泣いた」
「カモさん、涙もろすぎ」
「ヤラセくさくなかった? 僕はちょっと・・・」
「ゆっちんはあまのじゃくすぎ」
「いやいや、ユアトがイケメンで金持ちやからやろ。みんなすぐ信じすぎ」
「ゆっちんはイケメンに敵意持ちすぎ」
「いずれにしろゴーサインが出たんだ。ユアトを迎える準備にとりかかろう」
ほどなくして超科研の部室にイベント設営会社の営業が訪ねてきた。
イベンターが示した会場図面を見て、カモたちは驚嘆した。
「でかいなぁ・・・」
「オーロラビジョンは6m×12mあります。バドミントンのコートと同じくらいの大きさです」
「お高いんでしょ」
「僕たちお金ないんですけど・・・」
「いえ、代金は支払い済です。ユアトさんから」



作品名:スーパーソウルズ 作家名:椿じゅん