スーパーソウルズ
「これ、いつアップされた動画?」
カモを部長とする超科研部員4人は、一か所に固まってノートPCに映るYouTube動画を見つめた。
ゼーレ_ファーストインパクト20分の視聴を終え、リョウのリクエストで2度目の再生が始まっていた。
音量を下げ気味にして、レンがカモの問いに答えた。
「1日前とある。昨日かな」
「ユアトって誰だ?」
「ユーチューバーでしょ」
「それはわかってるけど・・・」
「風体はチャラいが、説得力はあるな」
「胡散臭い気もする」
「にしても、なぜ、こいつが今、ゼーレを取りあげたか」
「たまたま時期が合致しただけ?」
「うん、偶然の一致でしょ」
超科研2年生の3人は、ユアトが発信した動画を目に前にして、他人事だ。
「ばか、偶然の一致で済むか! 俺たちから漏れたんだ」
「や、それはないでしょ」
「なぜ言い切れる? 誰が今、ゼーレやアシュロフを話題にするやつがいるんだ?!」
「いないとも言えないでしょ、カモさん」
「まず、多香子さんに謝らないと」
「待ってよ、部長。僕らが知らなかっただけで、ゼーレやアシュロフはその界隈では有名やったかもしれへんで」
「うん、俺たちの目に触れなかっただけで」
「多香子さんが来たとき、なんかすっごい秘密な情報みたいに思ってたけど、実はそうでもなかったとか・・・」
「多香子さんの考えすぎ」
「誇大妄想っていうか」
「おいおい、お兄さんは実際に亡くなってるんだぞ」
「だから、ただの交通事故かもしれんやん・・・」
カモは返事に窮したが、ゆっちんに応答した。
「警察は信用できないって、ゆっちん言ってなかったか」
「時と場合による・・・」
ゆっちんの苦笑いとカモの呆れ顔。
リョウが言った。
「ねぁ、カモさん。こうやってユーチューブでネタにしてる奴がいるんですから、ゼーレは公然の秘密とかではありませんよ」
「そうだな、たしかに」
「取りあげ方がちょっとチャラけているし」
「信じるか信じないかは、あなた次第、みたいな」
「逆に穿った見方すると、あの事故に関する多香子さんの疑念を打ち消すために作った番組かも」
「部長、穿ちすぎ・・・」
「お金かけすぎ」
「それな。一般人が作る動画のレベルじゃない。金も時間も人手もかかっている」
「それに、ユアト、顔出ししてイケメンだし、喋りもうまい」
「細身で髪ふさふさだし」
「腹立つわぁ、そこ」
「えっ? ゆっちん、妬んでる?」
「妬んでへんわ! みるきぃはチャラい男は嫌いや言うてたし。男は顔やないて」
「ファンサな」
「うるさいわ!」
「問題は・・・」
カモが神妙な顔で呟いた。
「問題は?」
レンが問い直す。
「ユアトが、佐伯先輩の実験のことを知っているのか、知らないのか・・・」
「そういえばこの動画では、佐伯先輩の名前は出てこなかった」
「天根教授の名前もな」
「実験のことを知らないとすれば・・・」
「俺たちから漏れた可能性は限りなくゼロに近い」
「知ってるとしたら、厄介なことになる・・・」
「ユアト、また新しい動画アップしてくるんやろか」
YouTube動画を見る4人は、長い溜息をついた。
リョウがふと顔を上げて言った。
「どうする、カモさん?」
「どうする、って?」
ゆっちんが割り込む。
「これは、ユアトって野郎から俺たち超科研への挑戦状かもしれない」
「何言うてんねん、挑戦状て・・・」
カモがゆっちんを制して答えた。
「そうだな。ユアトくらい時間と金がある奴なら、俺たちのことも多香子さんのことも調べあげてるかもしれん」
「もし佐伯先輩の事故が単なる事故じゃないとしたら・・・」
「多香子さんの身に危険が及ぶ・・・」
「みんな、考えすぎやて」
「ゆっちん、よく考えろ。俺たちが、大事な情報を世間にばら撒いたのかもしれない。もし、そのせいで多香子さんに何かあったら、お前どう責任をとるんだ?」
ゆっちんは縮こまって黙りこんだ。
「みんな、動くぞ!」
「何をする?」
「ゼーレとチェザルモの真実を確かめる」
「できるのか?」
「やるしかない。まずは・・・」
「ユアトか」
「ユアトは手強そうやで・・・」
「うん、奴は一筋縄ではいかなさそう」
「しゃあないなぁ。ユアトは僕が尻尾を掴んだる」
「とりあえず一番手がかりとなるのは・・・」
4人が口を揃えた。
「橋本正次郎!」