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スーパーソウルズ

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会議室から部室に戻った超科研の4人は、各々の定位置に落ち着き、ペットボトルの水を回し飲みした。
皆、一様に苦り切った表情だ。
「何を見せられてたんだろう・・・」
リョウは脇に抱えたノートPCを、年季の入った角机の上に置いて吐息をついた。
レンは背表紙に学園祭資料と手書きされたファイルを手に取って、言った。
「佐伯さんが部に在籍してた年は、転生がテーマみたいっすね。血縁も面識もない赤の他人の記憶をもつ子どもを調査してる」
「信じていいのかな、佐伯先輩の話」
「どういう意味だ、リョウ?」
「初めはさ、妹思いの良い兄貴だと思いながら聞いてたんだけどさ。だんだんこいつ大丈夫かっ?てなった。最後のほうは醒めてきた」
「ゼーレか?」
「それが決定打かな。そのうち人類補完計画とか言い出すんじゃないかって」
「ごめん、ゼーレって何?」
「知らんのか、ゆっちん」
「へへ、俺プリキュア派やから」
「エヴァンゲリオンに出てくる組織の名前」
「それって、イルミナティみたいな感じの?」
「・・・遠くはないが近くもない・・・」
「エヴァは関係ないだろ」
「どうしてそう思うんですか、カモさん?」
「佐伯道雄がいうゼーレは元の意味の魂に近い。二次元じゃなく、実際この世に存在するもの。大学教授が研究対象にする何か。それに・・・」
「それに?」
「ゼーレは佐伯先輩が言い出したんじゃなくて、アシュロフ教授が提唱した概念だから」
「そこなんですよ、カモさん。アシュロフって学者、聞いたことがない」
「俺はある」
「ちょっと調べてみます」
リョウはスマホを操作してgoogle検索を始めた。
「やけど、部長。魂という概念自体はアシュロフ以前、大昔からありますよ」
「うん、そこなんだよな、ゆっちん。それまでは魂は神学や哲学の世界で語られていた。
それはなぜか。人の目には見えなかったから。20世紀に入って科学が進歩して今まで見えなかったものがいろいろ見えるようになってきた。
いわゆる素粒子とかな。それで魂でさえ科学的に研究する対象になってきたんだ」
リョウはwikiに出てきたアシュロフの項目を読み上げた。
「オリベール・アシュロフ。ポーランド出身在住の理論物理学者。あと生年月日と没年しか書いてない」
「業績とか、中身は?」
「ない。何も書かれてない」
「変だな」
「実在したのか疑問」
「次はゼーレを調べてみる」
リョウが再びキーボード入力するのを、カモが制止した。
「待て、リョウ!」
カモの声が普段より大きかったので、リョウは驚いた。
「何?」
「今すぐwifiを切断しろ」
「どうして?」
灌北大学は構内すべてwifi環境が整備されている。
「いいから」
カモに急かされてリョウはPCのwifi接続を切った。
カモは少し安堵の表情を見せて言った。
「リョウ、ゆっちん、レン、考えてみろ。俺たちは佐伯先輩が身を挺して守ろうとしたデータを覗いたんだ。
多香子さんの許可なしにこの話を外部に漏らすのはマズい」
「アシュロフを調べただけだし・・・」
「漏れてないでしょ。心配しすぎですよ、カモさん」
「だといいが・・・」
カモは顔を曇らせた。
それから2週間後、カモが心配していたことが現実になった。


作品名:スーパーソウルズ 作家名:椿じゅん