スーパーソウルズ
ゆっちんとレンは身をよじらせたりのけぞったりして、SDカードから距離を置いた。
「何? 俺たち地雷踏んでるの?」
「でももしこれが想像していたものではなく、本当につまらないものだったら、あれは事故だったんだと納得できます・・・」
多香子は目に涙を浮かべてテーブルの端から落ちかけているSDカードを中央に戻した。
カモは「すみません」と多香子に謝りながら、一方でリョウたちに、彼らがとった非礼な振舞いを目で叱った。
「リョウ、ゆっちん、レン、なあ本当に、本当に大事なデータを預かるとしたら、お前らどうする?」
「まず、PCに入れっぱなしにはしないな」
「リムーバブルメディアに保存する。鍵をかけて」
「で、金庫にしまう。もしくは銀行の貸金庫に預ける」
「でもそれより、もっともっと大事なものだったら?」
「きっと、肌身離さず持っておく」
「だよな」
「あ、俺いっつも、みるきぃのチェキを財布に入れてるわ。ほんま、みるきぃは・・・」
尻ポケットの財布からアイドルの写真を取り出そうとするゆっちんを,カモ、リョウ、レン3人が押しとどめた。
「ゆっちん!」
「2回目」
「罰金1000円」
「グランド3周」
「ひどいな、みんな。俺はな、将来大金持ちになって、みるきぃと結婚・・・」
「それはない!」
カモ、リョウ、レン3人が口を揃えてゆっちんに言った。
多香子がうふっと笑った。
実兄の後輩たちとはいえ初対面の男子学生相手に真剣に話を聞いてもらえるか、多香子は初め不安だった。
その不安からくる緊張で顔が強張っていた。
しかし軽い若者のノリと話しやすい雰囲気にその緊張が少し和らいだ。
カモたちはそんな多香子の様子を見て、笑顔を交わした。
「貸金庫に預けるのさえ不安に思った。で、ブレザーに縫い込んで、始終持ち歩いた。眠ってる間も心配だったろうな」
「多香子さんの話を聞いて、俄然このSDの中身が気になりました。でもこれってやっぱ、お兄さんの遺品ですよね。赤の他人の僕たちが勝手に開いていいのかな」
「お願いします」
カモたちは思案した。
多香子は、亡き兄を思いだすかのように、SDカードに触れた。
「私、東京に知り合いがひとりもいなくて・・・。兄が住んでいたときには一度も・・・」
「多香子さん、僕が一緒に・・・」
多香子の手に触れようとするゆっちんを、リョウが全力で羽交い締めした。
こうして超科学同好会の4人は、多香子から1枚のSDカードを預かることになった。
「暗号キーを解除するのか・・」
「パスワード入力に何回か失敗したら中身が壊れる仕組みのものもあるから、そこから確かめないと」
「だな、今うちにあるノートPCでは心もとない」
「暗号解読アプリとか、サイテーだかんな」
「知り合いにその手の専門家がいる」
「ゲームオタクのクラッカーか」
「違うよ、アキバのあいつ」
「大丈夫か」
「請け合う。メイドカフェ3回分くらいの貸しがあるから」
「心配ww」