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スーパーソウルズ

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  ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


捜索が始まって半時間ほどで、海底に沈んだ香織の遺体が発見された。
遺体はすぐさま町立病院に運ばれ、医師によって死亡が確認された。
死因は溺死であった。
溺死が故意によるものか何らかの事故によるものか、さらに原因を特定する必要があるとして、地元警察は遺体を東京都内の大学病院に移送すると決定を下した。
病院の地下の霊安室に、香織の遺体は半透明のビニール製の袋にすっぽり入れられて寝かされた。
若い警察官がひとり、霊安室の扉の前に張りついていた。
血縁関係のない真凛は、香織に対面することはおろか、遺体に近づくことさえ許されなかった。
病院の廊下で真凛は合掌して香織の死を悼んだ。
その日の夕刻、岡田港を離れる大型客船の船上に真凛の姿はあった。
デッキにもたれ海を眺める真凛に手には、香織がナイッアに残していったイルカのピアスが握られていた。
暮れゆく空と夜の始まりがせめぎ合う逢魔が時、東の水平線に淡くかかる雲間から真円の月がのぼり始めた。
客船のスクリューが蹴立てる波しぶきも色あせて見える薄暮の海面の下に、真凛は動く影を見た。
ふたつの黒っぽい影が、航行する客船と同じ速さで動いていた。
時折、三角形の墨色の背びれが海面の上に見え隠れする。
しばらくその黒い影は身を潜めたかと思うと、海面を切り裂いて空に向けて高くジャンプした。
バンドウイルカだ。
真凛の心に去来するものがあった。
手のひらに載せた一対のピアスを、真凛は見つめた。
2頭のバンドウイルカは客船と並行して泳ぎながら、抜きつ抜かれつしてジャンプの高さを競い合っていた。
無数の星々が輝き始めた穏やか夜。
イルカたちが戯れ遊ぶ姿を、真凛はどれくらいの時間見ていただろう。
真凛の手のひらからピアスが滑り落ちた。
ピアスは一瞬、淡く煌めき、海中に消えていった。
純白に輝く大きな月を背景に、2頭のイルカたちは天に届かんばかりに高く舞った。


作品名:スーパーソウルズ 作家名:椿じゅん