スーパーソウルズ
真凛が詰め寄った。
「香織さんの着けていたエアタンクが海底で見つかったと・・・」
真凛の顔が青ざめた。
「で、香織さんは・・・香織さんは無事なんですか」
女性は首を横に振り、
「チーフとインストラクターふたりで探しているので、ご心配なく」
女性の頼りない声を聞き終わる前に、真凛は店の外に飛びだしていた。
宙に浮いているようだ。
と香織は思った。
マスクやレギュレーター等一切の装備を脱ぎ捨ててウエットスーツだけになった香織は海中に身を置き、淡く光る海面を見あげていた。
既視感。
第一農業高校放課後のグラウンド。
1メートル80センチのバーを背面で越え、30センチ厚の安全マットに着地するまでの短い時間。
それが唯一生きていると実感できる瞬間だった。
空中に身を投げ出した瞬間に視界の広がる空の青。
あの空と同じ景色が頭上にある。
”私は生きている”
という思いを抱いて、香織は肺にある空気を吐ききった。
香織の最後の呼気が泡となって天上にのぼっていく。
流れくるまま全身に海水を吸い込んだ香織は、ゆっくりと海底へと沈んでいった。