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スーパーソウルズ

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#2.姫君




「簡単に見つかると思ったんだけどな・・・」
敦木市中心街の道を七尾ひめと金井カーネル真凛、山本恭一の3人が並んで歩いていた。
3人は行方不明になっている椿谷裕司の情報を提供するため、敦木警察署に出向いた帰りだった。
ひめと真凛は琴和女学院高校生で裕司の知人。
恭一は裕司の親友。同じ第一農業高校の同級生で同じ陸上部員でもある。
3人の手には道中、立ち寄ったファストフード店で買ったコーンアイス。
真凛はアイスをひとくち食べて、”もう2週間も帰ってこないとは・・・”、ともごもご。
「私にもっと力があれば・・・」
「ひめのせいじゃないよ」
「騎士団にやられっぱなしが悔しい」
「それな。俺はアホ警察の力を借りることが悔しい」
「伝わったかなぁ、あのお巡りさんに、微妙なとこ」
「伝わったんじゃない? 少なくとも普通の家出じゃないと・・・」
「だといいけど」
「警察はやっぱ苦手だわ」
「本当にありがとうございます、ひめさん、真凛さん。裕司のために」
「家出とかで処理されてるだろうから、捜索してもらうためには事件性匂わせておかないと」
「でも、なんで裕司は拉致されたんですか」
恭一が心配そうな声で訊いた。
「さあ、なんでだろうね」
真凛がはぐらかす。
「キシダンって何者なんですか。教えてくださいよ」
「ワンナイトカーニバル?」
「いや、そーじゃないでしょ」
「違った? ィエンジェール」
「もう、真凛さん」
「知ってても教えてあげない」
「三浦のあの霊園で何があったんです?」
「こら、キョーイチ! 声が大きい」
「すいません」
恭一はうなだれて溶けかけたアイスを舐めた。
「謝らなくていいよ、山本くん。いつか話せるときがきたらお話しするから、少し待ってて」
「ひめさん・・・」
恭一の持つコーンから抹茶アイスが溶け、よれよれのスニーカーの上にこぼれ落ちた。

黒塗りの高級乗用車が音もなく停車した。
ひめたちが歩く舗道のすぐ脇だ。
靴にこぼしたアイスを拭き落とすのに恭一は懸命だった。
「山本くん、きょうはお疲れさまでした」
そう言うとひめはショルダーバッグを肩に掛け、舗道の柵をひょいと乗り越えた。
そして車の後部座席のドアが自動で開くのを待った。
車内の様子は、窓に貼られた濃いスモークで遠目には見えない。
「会長のお呼びか、ひめ?」
真凛がひめに問いかけた。
恭一が呆然とした顔でひめを見あげる。
ひめは「うん」と首を振って微笑み返した。
「そういうことだから夜の練習はなしね。真凛、メンバーに伝えといて」
「わかった。でも弱ったなぁ。予定が空いちまった」
車のドアが閉まった。
低いエンジン音を鳴らし、高級乗用車はひめを乗せて走り去った。
取り残された真凛は舌打ちして空を見あげ、それから恭一の肩を叩いた。
「キョーイチ、このあと暇だろ、付き合え」
真凛に好意を持つ恭一は緊張が昂じてまともに真凛の顔を見られない。
震える声で
「真凛さん・・・今、何て・・・」
「だから今夜付き合えって」
「俺でいいんすか?」
「ああ、ひとつ言っとくが・・・」
「わかってます、真凛さんは男に興味ない・・・」
「そういうこと」
真凛は財布の残金を確かめると、スマホで横浜山下公園までの移動時間を調べた。


作品名:スーパーソウルズ 作家名:椿じゅん