スーパーソウルズ
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ジローは?」
それがユアトに車に運ばれた裕司の第一声だった。
「ワンちゃんかい? うしろにいるよ」
ワンボックスタイプのタクシーは車内空間が広い。
いわゆる3列シートの最後列部が荷室にされており、その空間にジローは乗せられた。
ジローを荷台に寝かせてラグを掛けると、運転手はハッチバックを締め運転席に戻った。
2列目のベンチシートで仰臥している裕司は
「ジロー」
と呼びかけた。
だが返事がない。
「ジロー、ジロー」
裕司の声が焦った。
上体を起こしてジローの様子を見たかったが、手足を縛られているわけでもないのに身体の自由がきかなかった。
身体の至るところに刺すような痺れと痛みがあり、裕司は身動きが取れなかった。
「でも具合はあまりよくない。動物病院に行かないと」
ユアトが助手席で、シートベルトを締めながら言った。
「運転手さん、急いでください」
運転手はアクセルを踏みこんだ。
タクシーは猛スピードで山をおりていった。
「ユアトさんと呼んでいいですか?」
「ああ、かまわないよ」
「ユアトさん、あの動画・・・」
痛みが和らぎ少し落ち着きを取り戻した裕司がユアトに尋ねた。
「敦木駅前の事故・・・」
「えっ、ユーチューブ見てくれたんだ」
「チラッとです。本当にチラッと・・・」
「ごめんね。君に無断でアップさせてもらった」
「それはいいんですけど、あの事故・・・」
「あの事故・・・?」
「僕と関係あるんですよね、あの事故・・・」
ユアトは、ヘッドライトが照らす前方の闇を見ながら言った。
「裕司くん。疲れたでしょ。ゆっくり休むといい」
ユアトに勧められたが、不安や疑問が入り混じって眠れない。
「ユアトさん、ひとつ訊いていいですか?」
「何?」
「あの光・・・」
「あ、あれ・・・」
「何だったんですか、あの眩しい光?」
「あの光か・・・説明が難しい・・・」
ユアトが言い淀んだ。
「知ってるなら、ぜひ・・・」
「知ってるわけじゃない。あくまで個人的見解だけど、あの光は・・・」
裕司はユアトの答えを待った。
「ゼーレと関係がある。もし眠れないなら、裕司くんに見てほしい。僕が公開した動画すべてを」