スーパーソウルズ
女子校生たちが裕司の声に驚いて逃げる。
裕司の手からスマホが滑り落ちる。
ジローが吠える。
バス停にバスが到着する。
ジローの鳴き声にハッと我に帰る裕司。
地面に落ちる前に、裕司はスマホを素早くキャッチした。
駐在所のガラス戸が内側から開き、警察官がベルトを締め直しながら四角い顔を出す。
バスが停車し、乗降口から乗客が降りてくる。
裕司はピンク色のスマホをそっとベンチの上に置いた。
でっぷりとした体格の警察官が裕司のほうに近づいてくる。
ジローの頭を撫でつつ、裕司は警察官の動きを察知した。
ここで警察官の職務質問に答えるか、背を向けて逃げるか。
そのどちらでもない方法を裕司は選んだ。
すっと立ち上がると俯いたまま、警察官のほうに近寄っていった。
ジローが裕司のあとをついていく。
「キミ・・・」
と警察官の口が動きかけた。
裕司がすうっと顔をあげて警察官の口元を見た。
その途端、警察官はグッと息を詰まらせた。
金縛りに遭ったように警察官の手足が動かなくなった。
目だけが裕司を追う。
裕司は警察官の横を、ジローを伴って平然と風のように通り過ぎた。
裕司が駐在所の前を横切った頃、警察官はつんのめってバス停付近に立ち止まった。
「えーっ」
息を吐ききって、慌てて駅前周辺を見廻した。
「家出人のファイルにあった顔・・・」
どこにも男子高校生の姿はなかった。
ベンチに取り残されたピンク色のスマホが警察官の目に入った。
動画再生中のスマホを覗き見ると、髪の長い端正な顔立ちのユアトが笑みを浮かべ映っていた。