EMIRI 2 あたしの話聞いてるの?
「聞いてるよ」
「いつも『ふーん』とかばっかりだもん」
「ちゃんと面白いなって思って聞いてるよ」
「そうか。でね、そのあとリキ君は、ケイちゃんに気を使って、『何か歌う?』とか聞いてんの。普段そんなこと言わないのに、変な空気よね(笑)」
「・・・リキ君て誰?」
「あ、リキ君はチーちゃんの彼氏みたいな相手よ」
「彼氏みたいなって?」
「まだ正式には付き合ってないのかな。そんな相手よ」
「ふーん」
「ほら、また『ふーん』て」
「それくらい言うだろ」
恵美莉は機嫌よく笑った。
「それで、ヒデキさんがマイクの準備したんだけど、重い空気で誰も歌わないのよ(笑)」
「・・・ヒデキさんて?」
「もう、何言ってんのよ。ヒデキさんは、エルモのマ・ス・タ・ア」
「マスター? ああ駅前のカフェの?」
「そこはマリモ。エルモは、RSビルの3階」
「ああ、あのバー、エルモっていうんだ」
「St. Elmo’s Fire BAR(セント・エルモス・ファイヤー バー)」
「長い名前」
「そんなことも知らなかったの?」
「いいや、よく行くバーだろ。俺誘われたことないけど」
「・・うん、ま、そのうちにね」
「で、そのカバンのコは・・・何だっけ?」
「ケイちゃん!」
「ああ、そうそう、ケイちゃん。いつものコだね」
「本当に分かってる?」
「もちろんだよ」
(あれぇ? 本当にそいつらの話、聞いたことあるのかなぁ? 全然思い出せない)
作品名:EMIRI 2 あたしの話聞いてるの? 作家名:亨利(ヘンリー)