EMIRI 2 あたしの話聞いてるの?
あたしの話聞いてるの?
「・・・チーちゃんが。おっことし(落とし)ちゃったのよ。そしたらお皿が割れて・・・」
「ふーん」
「それでさぁ、ケイちゃんのカバンに破片が飛んで、傷が付いちゃたのね・・・」
「ほう」
「ケイちゃんて、ブランド好きでしょう。(笑)それが、それがヴィトンのエナメルのカバンだったわけよ・・・」
「へぇえ」
「チーちゃん焦っちゃって、謝りまくって、ケイちゃんは『いいのよ~』とか言ってたんだけど、いいわけないじゃんねぇ」
「ああ」
「だけど、弁償するってのもねぇ。ほんのちょっとの傷だし」
「ふーん」
「それも切れたとかじゃなくって、表面に擦れたような跡が付いただけみたいだし」
「へぇえ」
「そこでシンちゃんが、みんなにミモザを御馳走して、とりあえずその場は収まったのよね」
「ほう」
「でもチーちゃん、気まずいでしょうねぇ(笑)」
「ああ」
恵美莉は、フォークでマドレーヌを突いて、頬張った。春樹は窓の外を眺めながら、アイスコーヒーのストローを吸っている。
(いつも詰まんない話ばっかりだな。チーちゃんて誰だっけ? ケイちゃんも分からないよ)
春樹は、恵美莉の話を聞きながら、なんとなく相槌を打っていたが、登場人物が誰か分からなかった。
「ねえ? あたしの話、聞いてる?」
恵美莉は口の中がいっぱいの状態で聞いて、アイスティーのストローを吸って、髪の毛をかき上げた。
作品名:EMIRI 2 あたしの話聞いてるの? 作家名:亨利(ヘンリー)