オヤジ達の白球 66話~70話
昨日。ビニールハウスが心配だからと早めに帰っていった
小山慎吾を思い出す。
あわてて毛布の下のポケットを探る。
携帯を取り出す。
一覧の中から小山慎吾の番号を選び出す。
数回の呼び出し音が鳴ったあと、「はい」と慎吾の声が返って来た。
「おはよう。慎吾か。
大変だ。たったいま俺の目の前で、丈夫なはずのアルミ製の
カーポートが崩壊した。
それで気が付いたんだ。おまえさんのビニールハウスは大丈夫か!」
「さっきまで徹夜です。朝の4時までハウスの雪下ろしをしました。
残念ですがこれ以上、雪をおろすスペースがありません。
やるだけのことはやりました。
これ以上は無理だとあきらめて、さきほど家へ戻ってきたところです」
「アルミの柱が雪の重みで折れたんだぜ。
ビニールハウスは、これだけの雪の重みに耐えられるのか!」
「群馬のビニールハウスは、雪国仕様ではないので何とも言えません。
耐えられるかどうか、微妙です。
しかし。いまのところは大丈夫です。まだ、つぶれていませんから」
「そいつを聞いて安心した。
歩いていたら目の前で、いきなりカーポートが倒壊したんだ。
急に心配になってきた。それでおまえさんへ電話したんだ。
わるかったな朝から、つまらないことで電話して」
「いえ。心配していただき、ありがとうございます。
こちらはいまのところは大丈夫です。
大将のほうこそ足元に気を付けて、周囲を見回ってください。
それじゃ」
それだけ言うと慎吾の電話が切れた。
(69)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 66話~70話 作家名:落合順平