オヤジ達の白球 66話~70話
「毛布は借りていく。急に俺の家が心配になってきた。帰るぞ」
祐介が庭へ一歩踏み出す。しかし、あまりの深さに思わず立ち止まる。
雪にはまった足が膝どころか、太腿まで隠れた。
想定をはるかに超える深さだ。
「なんという深さだ。ゆうに、60㌢は超えてるな」
「あら・・・ずいぶん深いわね。じゃ、長靴が要るかしら?」
「せっかくの厚意だがこの深さじゃ、長靴なんかまったく役に立たねぇ。
どうせ濡れるんだ。このまま濡れていくさ」
「うふふ。男らしいこと。じゃ、せいぜい気をつけて帰ってね。
あたしはもうすこし、ユウスケと惰眠をむさぼります」
「おう。世話になったな」
祐介が雪の中へ漕ぎ出す。
浅い雪なら滑らないようペンギンのように、よちよち歩けばいい。
だが膝の高さをこえると、そうはいかない。
普通の歩き方をしようと思っても、雪にもぐっている足が
すんなり前へ出ない。
足をいちど、後ろ寄りに引き抜く。
そこから大きく外へむかって振り出す。そこから弧をえがくよう
前へ踏み込む。
大股のがに股で前へ出る。つまりは、雪相手のラッセルだ。
「高台でラッセルするとは思わなかったぜ。
それにしても積もったなぁ。ふかいところは7~80㌢をこえてるな」
祐介が道路へ出る。
中央だけ除雪されている。車が一台通れそうなスペースが確保されている。
朝早く重機が、積もった雪を押し分けていったようだ。
作品名:オヤジ達の白球 66話~70話 作家名:落合順平