オヤジ達の白球 66話~70話
ほとんどの農家が、不意打ちをくらった。
ある農家は、徹夜での雪下ろしを終えたばかり。
あかるくなったため、休息のために家へもどった。
ある農家はハウス内の暖房を炊いた。これで屋根の安全は保たれると
判断した。
徹夜でハウスを守った男たちが、朝食をとるため自宅へもどった。
雪は峠を越えたと、誰もが考えた。
大丈夫だろう。もう安心だと、誰もが胸をなでおろした。
ほとんどの農家が、そんな風に考えた。
しかしわずか15分のあいだに想像を絶する被害が、群馬県内を
はしりぬけた。
ナスをつくっていた農家は、昨年、補助金を受けてつくったばかりの
ビニールハウスのすべてが倒壊した。
1ヘクタールのハウスが倒壊。
再建に必要な費用はおよそ8000万円。茄子の被害は3500万円。
キュウリをつくっていた農家は、5500平方メートルのハウスが倒壊した。
再建のための費用は3500万円。出荷できないキュウリは、
1000万円相当にのぼった。
農家は年に2回、作付けをする。
通常なら秋にも作付けする。
再建できなければ秋の作付けが不可能になる。
そうなるとキュウリの被害は、2000万円にはねあがる。
被害はビニールハウスだけにとどまらない。
トンネルでごぼうをつくっていた農家は、15000平方メートルのうち
9割のハウスでポールが折れた。おおっていたビニールが破れた。
ポールは1本130円。トンネルの再建に16200本のポールが必要。
ポール代だけで、200万円をこえる。
さらに破れたビニールも取り替える必要がある。
作品名:オヤジ達の白球 66話~70話 作家名:落合順平