L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開
「ミュウ。あなたって人間じゃないってことなの?」
ロキシーは空間のモニターに投影された私に近寄って、目を凝らしている。
「そうよロキシー。私はアンドロイドよ。正確には、バイオロイドから産まれたセカンドロイド」
私は顔を左右にゆっくり動かしながら、ロキシーに見せた。
「アンドロイドの子供? 揶揄ってるんじゃないでしょうね」
ロキシーは、呆れたような表情を作って、私から離れたわ。まだ疑ってるみたい。
「揶揄うだなんて。じゃ、考え方を変えてみて、私はヴァーチャル空間のプログラムよ」
ロキシーは立ち止まり、もう一度私をしっかりと見た。
「仮想現実のキャラ」
「その通りよ。私たちには個性があって感情もあるの。でもそれはこっちの仮想現実の世界での話」
私はロキシーに、単なるAIだなんて思われたくなかった。
「まさか、コンピュータープログラムが自由に行動してるって言うの? どんな世界なのか想像もできないわ」
「フフフ、私は現実の世界がどんなだか想像してきたけど」
「それじゃ、あなたたちは世界を破滅に追い込んだ“マザー・スー”の仲間ってこと?」
「誤解しないで、説明はややこしいけど、マザー・スーの暴走を食い止めたのも、私たちの世界のプログラムだから」
「じゃミュウは、変な噂は本当だったって言うのね」
「噂? まだ疑ってるの? ロキシー。私がその噂に乗っかってウソをついてるって」
「・・・いいえ。これで説明が付くわ。世界が滅びかけて10年経つけど、そのあとの復興スピードは尋常じゃなかったのよ」
ロキシーは真剣な表情になった。
「どんなふうに?」
「なんだか、宇宙人のテクノロジーでも使ったんじゃないかって思うくらいで、どこでそんな研究がされてるのかさえ解らないんですもの」
私は少し地球の様子が解ったような気がした。
「ある意味、アップルの住人は宇宙人だものね」
「じゃ、宇宙人さん。あなたは私に何の用?」
「ロキシー、私は本当の地球の話を聞かせて欲しいの。私たちがどんな役に立っているのか知りたいのよ」
私はロキシーに友達になってほしいって思ったわ。だって私の友達って、子守ロボットのピンキーだけだったもの。
作品名:L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開 作家名:亨利(ヘンリー)